第1章 砂漠の月00~70
元就が市に、と驚きではあったが、晴久を見つめていた時間だけ同時に三人も見つめてきた月子は心の中で晴久もきっと市にそういう気持ちがあったと睨んでいる。
そして、月子は晴久が市に向けるその心が羨ましくて、そこに最初の恋をしたのだ。勇気を出して、見ているだけだった宝石に触れて、月子は憧れた恋を自分に重ねるのが虚しいと知った。
「市先輩は、市先輩らしくしてればいいと思います。少しだけ、元就先輩が幼馴染だけじゃなく異性だってことを思い出してあげれば、後はなるようになりますよ!」
「うん……考えてみる」
「はい」
二人して紅く頬を染め、お互いに視線が絡むとフフッと笑みが溢れる。
市は月子に話して少し落ち着いたのか穏やかになりつつあった心のまま、月子にこのままベッドで寝ましょと誘い二人で寄り添って目を閉じる。
いつも通りのようで明日からは少し違う日常が始まるのを予感しながら、二人はゆっくりと眠りについた。