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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


唐突に、急所のような問い掛けを投げられ、月子は一瞬言葉に詰まるが自分でもあからさまだと思うほど反応する事もあり観念して認める。
そして、市のその唐突な質問が今の市の態度に関係があるなら、と月子は市に素直に自分の気持ちを吐露することにした。

「……恋愛未満?」
「はい。初めて晴久先輩に声を掛けた時、私は表面上の晴久先輩しか知りませんでした。晴久先輩に限らず、市先輩も元就先輩も噂と見た目で得た印象しかなかったんです。憧れてましたけど、恋に恋してるっていうのはああいう状態のことかなって今は思います」
「今は、違うの?」
「そうですね……あの頃から随分と状況が変わりましたし、こうして親しくして貰って漸く晴久先輩の本当の姿とか見せて貰えるようになって……。今は恋の意味を知る過程なんだと思うんです」

恥ずかしくて顔を俯かせ、頬を染めながらも一生懸命考えて話す月子に市はやはり羨望を感じて目を細めてその顔を見つめる。
初めて会った時は可愛い印象の強かった月子に、今は時折綺麗だと感じる一瞬がある。

「好きって伝えないの?」
「今はまだこのままで良いかなって。もっと色んな晴久先輩を見て、触れてこの気持ちがホントの恋になったら玉砕覚悟で言ってみたいなって……」
「……あの、ね? 帰ってきた時、晴久と月子ちゃんを見て良いなって思ったの。それで、元就に自分とするかって言われて」

月子の素直さが市の気持ちを動かしたのか、暫くの沈黙を要したが市が少しずつ話しだす。月子は黙ってその言葉に耳を傾け、戸惑ってるという市の心に寄り添おうとする。

「市は、恋とか、考えたことなかったから……だから、そんな風に思ってくれてたなんてびっくりして。頭真っ白になっちゃって……」
「嫌だったんですか?」
「まさか! でも、申し訳ない、かな……」
「それは元就先輩が可哀想です。元就先輩はきっと市先輩の気持ちを汲んで、市先輩が幸せであってほしいって今まで言わなかったんです。罪悪感持たれてしまったら、市先輩のホントの気持ちも見えなくなっちゃいますよ、きっと」
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