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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


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月子は晴久と共に玄関の扉を潜ってすぐ、市と晴久による元就の母親像を理解、納得することになった。
入った家の中は薄らと煙が漂い、一瞬火事かと思った月子が咄嗟に晴久の服を掴むと代わりに手を繋がれて奥へと連れて行かれた。
結果はレンジの使い方だったようで市と元就が母親らしき女性を叱っているのが見え、しゅんと反省しているかと思えば月子と晴久を見てからかうバイタリティに月子は目が点になる心地だった。
その後、市が片付けをするからと一旦は案内されるまま二階に上がった月子だが、手伝った方が良さそうだと思い足を止めると晴久の服を引っ張る。

「あの、私、市先輩を手伝ってきます」
「ん? そうか。なら、荷物持ってってやるよ」
「すみません、おねがいします」
「月子、違う」
「あ……えと、ありがとうございます」
「ん。市の手伝い頼むな」
「はい!」

引っ張られる感覚に晴久が振り返ると、月子が控えめにだが伝えると一瞬考えるそぶりを見せて手を差し出す。晴久の提案に素直に荷物を渡す月子に、簡潔に指摘すればきちんと理解して言い直される言葉に笑って頷き、頭を撫でて階下に送り出した。
一連のやり取りを呆れたように見ていた元就は、しかし何も言わずに視線を向けてきた月子へ行って来いと手振りで示し、見送ると晴久と部屋へ入っていった。
月子が台所に戻ると、まだ薄らと漂う煙の中、市がせっせと片付けをしていた。

「市先輩、あんまり役に立たないかもですが手伝います」
「月子ちゃん……ありがとう。じゃあ、お茶入れてくれる?」

月子が声を掛けると驚いたように振り返った市がふわりと嬉しそうに笑い、それじゃあとやることを渡してくれた。
急須と茶葉、湯呑を渡された月子はわかりましたと頷いて手順通りにお茶を丁寧に淹れていく。
その間に市がレンジの中を片付け、お茶を入れ終わり、お茶菓子に持ってきたお菓子を添えて盆に乗せると市も片付けが終わったのか月子の方へと来た。
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