第1章 砂漠の月00~70
市の傍まで駆け寄って、改めて誘われて月子といつきが笑顔で頷くと浜辺へと駆けていき、準備を手伝う。
袋を開けて、手持ち花火を配って、据置きタイプの花火は離れた所で砂浜にやや埋めて置き、元親や政宗が着火していく。
シューシューと花火の音が響き煙が舞う中で煌めく火花を見て笑い合う。月子は散々混ざって、やや疲れてきたところで離脱して眺めていると肩にぽんっと手を置かれる。
ビクリと跳ね上がったが、それは純粋な驚きでそのことに月子は内心で安堵しながら見ると晴久が立っていた。
「晴久先輩?」
「おう、一人だと危ねぇぞ?」
「大丈夫ですよ、市先輩やかすが先輩みたいに美人でもないんですから」
「昼間に酷い目にあったばっかだろ?」
「うっ……」
昼間の恐怖を指摘されると、月子としても言い返すことが出来ず情けない表情になってしまった自覚はある。
苦笑しながら頭を撫でられて素直にごめんなさいと謝ると、撫でている手がポンポンと跳ねて離れてから目の前に線香花火が差し出される。
「あっちで誰が一番長くやってられるかって競争らしいから行くぞ」
線香花火を受け取ると手を取られ、晴久に引っ張られて全員が集まっている場所へと向かう。
向けられる視線が生暖かい様な気がして恥ずかしく、近づくにつれて視線を下に向けてしまった月子だが晴久は気にしていないようでそのまま合流すると手がスルリと外れた。
暖かさが離れた手が少しさびしくて、きゅっと握ると漸く顔を上げた月子は市と目が合い、にこりと微笑まれて思わず頬を染める。
ばれてる……そう、直感したが今更ごまかしようもなく、ぺこりと頭を下げるといつきに呼ばれてその横でしゃがみ込んだ。
そこからは全員が真剣勝負で勝った、負けた、と大騒ぎで月子も心から大いに笑って夜遅くまで騒いだ。
翌朝、いつもの時間に目が覚めて起き上がると市が着替えて部屋を出るところだったので声を掛け、月子も着替えて朝食の準備を手伝う。
皆が起き出す頃には朝食は出来上がっていて、食べ終わると今日は帰りがてら観光だと途中で寄り道したりして帰り、お土産に女性陣で揃いのキーホルダーを買ったりと楽しい一泊旅行となった。