第1章 砂漠の月00~70
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バーベキューが終わり、片付けが始まると月子も手伝おうと動き出したが空き缶を持てば政宗やら小十郎やらが取り上げてしまい、お皿を片付けようと手にすればいつきや佐助が取り上げて行くので困ってうろうろとしていると腕を引かれてよろめく。
触れた手の大きさに昼間の出来事を思い出して大きく身体を揺らしたが、すぐにその温もりがよく知っている者のだと気付くとほっと安堵の息を吐いて振り返る。
「片付けは良いから座っとけ」
「でも、私今日は何もお手伝い出来てなくて……」
「昼間に溺れかけた奴を手伝わせるほど人手がないわけじゃねぇよ。この後花火やるっつってたし、一人先に部屋戻って寝たいのか?」
「うっ……それは、やりたい、です。」
「なら、大人しくしとけ」
「はい……」
予想通り、振り返った月子の後ろにはTシャツにハーフパンツというラフな格好をした晴久が立っており、空いているウッドチェアに座る様に誘導される。
周囲の仲間たちが生温くその様子を見ているが、晴久も言う通り昼間に溺れかけた人間にまで手伝わせないといけない程人手が足りないということはない。むしろ多いくらいで手慣れた面々はサクサクと道具や残った材料などを片付けていく。
月子が手持無沙汰な思いでその片付け風景をぼんやりと眺めていると、いつの間にか来ていたいつきに声を掛けられた。
「月子ちゃん、大丈夫だか?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「無理してないだか?」
「うん。ちょっとだけ、何もお手伝い出来ないのが申し訳ないだけだよ」
心配そうにのぞき込まれてハッと我に返った月子はにこりと笑顔を浮かべて返事を返す。少し疑わしげに見られたが、正直な心境を伝えれば兄ちゃんたちは心配性だからと明るい笑顔と共に言われ月子の心も少し軽くなる。
少しだけ強張っていた笑顔がふんわりとした月子本来のモノになり、いつきと笑い合っていると離れた場所から市が笑顔で手招きしてきた。
手持ち花火と据置きタイプの打ち上げ花火も用意してきてあるらしく、今からそれをやるために浜辺に出るということだった。
「花火、やりましょ」
「はい!」
「うん!」