第1章 砂漠の月00~70
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日々はゆったりと、刻一刻と過ぎていく……。
学園祭も過ぎ、試験も終わった現在、夏休み間近になり気温は灼熱を示しているかのようにうなぎ登りである。
「……海、行きたい」
ぼそりと呟いたのは市で、近くで聞いていた晴久と元就も同意するようにコクリと頷くと素早く武将LINEに通知がなされた。
そしてもう一人……。
「月子ちゃん」
「市先輩! おはようございます」
「おはよう」
朝、通学途中で出会った市たちと月子は自然と並んで歩き始める。月子に羨望の視線が集まるが、月子も市も視線には気付かず、晴久と元就は慣れきっているので完全にスルーしていく。
そんな中で、市が徐に月子へと海行きの話を持ち出した。
「海、ですか?」
「そう。市と、晴久と、元就と、他のメンバーも居るけど」
「……他の方もご一緒で、私が混じるとご迷惑になりませんか?」
「それはない」
サプライズでも良いが、さすがに人数が人数なので他の人も行くことを伝えれば月子が少々戸惑った表情を見せた。
晴久との初対面こそ押せ押せで突撃していたが、あれは勇気を振り絞った結果であり実際には人見知り気味で大人しいタイプである。月子の戸惑いも理解した上で、迷惑にならないかという言葉にきっぱりと否定をしたのは意外にも元就だった。
きょとんとした表情を見せたのは月子で、クスリと笑みを零したのは市と晴久。元就もそろそろ月子の存在をしっかりと身内に入れ込んでいるらしい。
「えと……じゃあ、行きたい、です」
「良かった!」
遠慮がちだが、はっきりと好意的に希望を伝えてきた月子に市が微笑んで偉い、偉い、と頭を撫でる。
撫でながら、水着を一緒に買いに行こうと誘うが月子は今日は用事があったため、最終的に市が用意しておくという話で落ち着いた。
お金がかかることだしと遠慮しようと思ったが、にっこりと笑顔で押されては月子が折れるしかなかった。
そして迎えた海水浴当日、月子は脱ぎやすい生成り色のコットンワンピースと濃い色のインナーワンピースを重ね着して、薄手のUVカットカーディガンを羽織ってお迎えに来て貰った結果、市の家の前に居た。