第1章 砂漠の月00~70
月子はきょとんとそれを見送ったが後ろから頭を軽く撫でるように叩かれ振り返ると、苦笑した晴久に行くぞと促されてそちらへと移動した。
選手たちは負けたのが恥ずかしかったのと、普段は遠巻きで声を掛けられないのに純粋に掛けられた労いの言葉に照れたのとで逃げて行ったのだ。
市たちとお昼ご飯を食べられる場所に移動しながら、声を掛けたらまずかったかと今更心配になった月子がツンッと晴久の空手着を引っ張る。
「どうした?」
「あの……私、声掛けたらまずかったですか?」
「ん? ああ、ありゃ照れただけだから気にすんな」
「照れ……?」
不安そうな月子に一瞬警戒しかけた晴久が、問いかけられた内容に一瞬首を傾げ、直ぐに察して笑い出すと気にするなと頭を撫でる。
言われた方の月子はどうして照れるのかが判らず不思議そうに首を傾げるが、テーブルのあるホールで先に席を確保した市たちに呼ばれ考えるのを止めるとお昼ご飯を堪能することにした。