第1章 砂漠の月00~70
そんな月子に三人が顔を見合わせて苦笑すると、早速最終的に決まったトップスとボトムスを持ってレジへ並ぶ。
購入されたそれをタグを外してもらって受け取ると、普段選ばないデザインに逃げ腰ながらも試着室で着替える。
巻きバラのデザインで首元に交差するリボンがあり、裾にレースがあしらわれたトップスとバラのイラストがプリントされたリボンベルト付きのベージュのスカートで着替えて試着室から出ると市に可愛いを連呼されてぎゅうっと抱き締められる。
「あの、ありがとうございます」
着慣れなくて頬を染めた月子が、お礼を言えば三人が三人とも頭を撫でていく。
その後もそれぞれが利用するブランドショップに行っては銘々に服をトータルコーディネイトしていると、途中に昼食を挟んだこともありあっという間に夕方になっていた。
増えた荷物を男性陣が持って歩く帰り道、市の家に着くと自分の荷物を預けた晴久が月子を送るために戻ってくる。
「今日はお疲れさん」
「晴久先輩もお疲れ様でした。楽しかったです」
えへへとはにかんで言う月子に、そうかと目を細めた晴久が頷き次は和装を見に行くかと言っていたぞと言われ、月子が驚くのを笑う。
帰り道までも楽しくふわふわとした心地で歩いていた月子は、自宅の前まで辿り着くと晴久が持ってくれていた荷物を受け取りながら真っ直ぐに晴久を見た。
結局三人も買った服にその場で着替え、市は出来る女性そのものだったし晴久も元就も雰囲気が変わってかっこよさが上がっていた。
その姿を今目に映して照れながらもありがとうございますと改めてお礼を言った月子に、晴久が目を瞑るように告げる。
「良いって言うまで開けるなよ?」
「はい」
素直に目を閉じた月子に、晴久がポケットから取り出したのはバラが刺繍されたシンプルだが上品さのあるバレッタだった。
アウトレットを移動中に通りかかったワゴンショップで目について購入していたのだ。
晴久が月子の髪に触れ、片側の一房を手にすると器用にバレッタを留める。
いいぞと言うと目を開いた月子は頭にある違和感に手を伸ばす。
「晴久先輩……これ……」
「ん、似合いそうだと思って買ったんだが、よく似あってるぜ」
「っ! あ、りがとう、ございます……」