第1章 砂漠の月00~70
戸惑いながらも言われた通りに着替えてカーテンから顔を出すと、三人揃い踏みでそのまま外に出るよう指示される。
解っていないままの月子がカーテンの外に出て行くと、三人は月子を見て何やら話し合い元就と晴久が店舗の方へと戻っていく。
「市先輩?」
「ん、今日はね、せっかくだから三人で月子ちゃんを上から下までガッツリコーディネートしようって話してたの」
「えぇっ?! そんな話いつしてたんですか!」
「昨日の夜」
にっこりと、素敵なお御足を堂々と出した市に言われ、ここが店内であるのも忘れて叫んだ月子は慌てて両手で口を押さえながらもオロオロし始める。
いくらなんでも高価すぎる物を貰えないと言いたかったが、言う前に市にさらににっこりと微笑まれて逃げられないと悟る。
がっくりと肩を落として諦めた月子は、そこから着せ替え人形と化したのは仕方ないことだった。
次々と運ばれる服たちを言われるままに着替えて、着替えて、最終的に収まったのはかなりの時間が経ってからだった。
「市先輩、晴久先輩、元就先輩、嬉しいですけど、コートと靴と鞄までは高過ぎて受け取れません…」
「でも、全身コーディネートしたいのに」
「大した金額でもあるまい、何を言うておる」
「無理です、無理です、うぅ、晴久先輩助けてください…」
中の服が決まり、それに合わせたコートと靴、それに鞄まで買おうとしている市たちに流石に月子から泣きが入った。
両親がどんなに社長で金持ちでも月子にさほど自由になるお金はなかったので、金銭感覚は一般的である。
グイグイと押してくる市と元就に、半泣きで説得しようとする月子が途中から苦笑して見ているだけになった晴久に助けを求めると手が伸びてきて頭を撫でられる。
現在、試着室は他の人に譲って店内の隅の方で話し合っている所である。
「仕方ねぇなぁ……コートと靴と鞄は今日着てきたやつでも合うだろうから買ったらそのまま着替えて歩くってことにしたらどうだ?」
「むっ……」
「そうね、それなら今回は諦めるわ」
わしわしと宥めるように撫でられ、うぅっと唸っていた月子に投げられた助け舟は少々ハードルが高かったが、一式買われるよりはと一も二もなく飛びつきコクコクと頷く。