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【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】

第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)




 声が震える。言葉の合間合間に嗚咽が混じり、その情けなさに今まで秘めていた苦悩が灼けるような熱を持って一気に溢れ出す。


「うう、おれ、ちゃんと主の刀になりたいよう。強くなって、役に立って、ぐず、戦でもおれがいないと、だめになったら、もっとそばにおいてもらえるの?」


 違う。彼は自分を道具として扱っているわけではいない。心を持った一つの命として扱ってくれている。そんな安易な差別はけしてしない。けれど、だからこそ分からなくなるのだ。緋雨の愛の基準が何なのか。どうすればその愛に足る存在になれるのか。同じ質量を持ったほぼ無条件的なそれが、彼のどこから生まれてくるものなのか。


 分からない。分からない。緋雨は確かにここにいて、自分の手を握ってくれているのに。いつかこの優しさを失う日が来るのではないかと思うと、狂ってしまいそうなほど怖い。恐怖と不安が際限なく膨らんで、胸がいっぱいで苦しくて息も出来ないほどになっていて、きちんと思いが伝わるような、ふさわしい形に形成する暇もなく醜く尖った言葉のまま肺の中から溢れ出てきてしまう。


「じゃあ何で? 何で主は、俺を初期刀にえらんだの? 何で俺を愛してくれるの? 俺よりきれいな刀いっぱいいるのに、俺より強い刀いっぱいいるのに、何で毎日俺の爪を塗ってくれるの? ねえ何で、」

「清光」


 堰を切って溢れ出る言葉の奔流は、緋雨が自分の名を呼ぶたった一声でぴたりとせき止められた。こうして二人きりでいる時にはまず有り得ない声量だっただけに、心臓が痛いほど大きく跳ねて全身が硬直する。途端に身体のあらゆる末端からさあっと血の気が引き、耐え難い絶望感が身体の内側を黒く蝕んでいった。


 やってしまった。やってしまった。あれだけ恐れていたことを、こんな。言うつもりなど、少なくともこんな風に伝えるつもりなどなかったのに。よりにもよってこんな、まるで緋雨を責めるように、お前が悪いんだと言わんばかりに思いをぶつける気なんて、毛頭。


 一度やらないと決めたその意思を、感情の波が呆気なく揺らがせさらっていく。どうして人の身体はこんなにもままならないのだろう。分からない。唯一分かるのはそうして別のところに苛立ちを覚えたところで、言ってしまったという事実は変わらないということだけだ。


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