第86章 紡ぎ
この世を消さないと繰り返されるだけ
同じことが
創世神の親の時と同じことが、再び起ころうとしたように――
癌に対して優しさを、原初の神々と次世代の原初の神々が抱いただけで…現実となってしまうから
今、この時――時代は大きく変動を遂げようとしていた
ケイト「自分の思い通りにする力よりも、
人を幸せにする力が欲しい
強さなんていらない、力なんていらない
ただ…大事な人に、大事にしてくれた人に、幸せになって欲しいだけだ」
ガブリエル「どんな時でも、
どんな想いをさせられることになっても、
人のことを考えられる、優しい子よ」
神速艇で呟いたその折、時は止まり光が降臨した
ガブリエル「本当の正義とは…力なき正義よりも、力ある正義よりも、何よりも尊いものだ
『人を想い、考え、寄り添う…人を大事にする心』だ
『人を見る心』だ
力なんかは二の次だ、『人を想う、思い遣る心』が大事なんだ
最後の瞬間まで…貫けるから
たとえ死んだとしても…その為に抗う心が、何よりも大事だから」
ケイト「自己満足の為に、人を不幸にはしたくはない」
ガブリエル「それこそが、大事な根幹だ
大事にしなさい
「人を見ないで押し付ける自己満足」よりも
『人を見て寄り添い尊重する優しさ』を優先しなさい
それが、神々における価値基準だ
それに至れていない時点で、神ではない……
『全ては巡り合い、思い遣りの循環』
「『それ』を全て自らのみに流れ込むようにし、
何もお返しをせず、たかり続けるばかりか、
全てを利用し尽くし、殺そうとまでする」
それが「癌」だ
悩むな
一人で抱え込むな
一人になるな
私達は…ずっと見守っている
あなたが犠牲になる為に、この世に生まれ変わってくれたこと、選択したことを、私達は知っている
私達を守ってくれて――愛してくれて――本当に、ありがとう
ずっと…見守っているし、傍に居るよ
あなたの想いは、中身は…ちゃんと、届いているから(目を細めて笑い掛ける)←光と共に、温かな想いが伝わってくる
一人じゃないよ――
一人になんかは、させないよ―――
どうか――忘れないでくれ」微笑し、両腕を広げ、一塊の光となってケイトを抱き締めて包み込む
ケイト「……ありがとうっ」ぽつり
ぽとっ
涙が、頬を伝って落ちていった