第86章 紡ぎ
ケイト「………」
違うという想いに声を被せられ、俯いたままのケイトに…僕は続けた
フィン「別に責めているんじゃない
…消さなければならない現状も、ちゃんと理解してはいる
だが……どうにも…やり切れなくてね……
どうにか、チャンスを与えることは…と考えてしまうんだ
元の木阿弥にされるのが落ちだということも、十分わかってはいるんだが^^;」
ケイト「そうじゃないよ」
『…え?』
ケイト「そうじゃない…」
フィン「…何が、違うんだい?」
ケイト「この世以外では…ちゃんと、通じ合えている
想いが、中身が、嘘偽りなく、通じ合える場となっている
だが…この世だけが違う
でも…だからこそ、生者という枠が出来たことで霊体が生まれ、蓋となってくれたお陰で、フィルターとなって浄化してくれたお陰で、癌にもチャンスが与えられるようになった
この世では、口に発さなければ、伝えようとしなければ、何もわからないし伝わりもしない
でも…だからと言って、蔑ろにしていい訳じゃない
そこが本題なんだ…
どれだけ掃除しても、浄化しても、元の木阿弥だし
汚染を繰り返されるのが、それをやった人が消されるのが落ちなこともわかっている
そういうことじゃないんだ
チャンスを与えればよくなるとか、人々の意識を改善させればこの世を消さなくて済むとか、そういう次元じゃないんだよ
そうじゃないんだよ…
人やこの世にいる皆が、一丸となれば避けれるとか…そんなんじゃないんだ!!
現に…癌であっても何であっても浄化する光が無くなった途端に一気に戻った!!
元のヒビ割れ!←ヒビを指差す
元の澱み!←ススを指差す
元の歪み!←闇を指差す
全員に全員通達したとして、意識を改善できる人がどれだけいる?
自分で浄化出来る人がどれだけいる?!
まずは少人数にして、清浄な人だけにして、望みを託す以外に仕様がない!!
汚染する人がいる限り、現状は変わりようが無いんだ!!
どんなに神が増えたって!浄化を頑張ったって!!人にどうこう出来る問題じゃない!!!
もうそんな問題じゃないんだよ!!!!」
泣きそうな悲痛な顔で、悲鳴のように叫んだ
その時――わかった
この世がもう、壊れ掛けていて
チャンスとか言っている場合じゃない
その痛みを一番感じているのはケイトだということに―――