第86章 紡ぎ
DVや性的虐待を受けている者達に対して、
保護をすぐにでも出来るようにと言った合理的配慮から実行に移されたものだった
もし強盗に襲われて、おろせと強要されればすぐ、アプリを通して携帯越しに保護されるようになっている
襲い掛かる身の危険から身を守り、命を守り、その無事を願う心から生み出されたシステムだった…
ケイト「私が殺したようなものだ」
アイズ「そんなことない!!」
ケイト「それでも…
人のせいになんかは、したくは無いんだよ……
そんなに…軽くは無いから
人のせいにして…忘れてしまえるほど…簡単な存在なんかじゃないんだよ
大事だから…出来ないんだよ
やりたくないんだ
何があったとしても――!」ぎゅっ!←歯噛みし、拳を強く握り締める
眼光が黒く、鈍く光り、
突如、左目が強く白く光った
目を覚ませと――怒りや憎しみに囚われるな、身を委ねるな、と
ケイト「あ…ごめん、ありがとう」苦笑
アイズ「……それでも…」
ケイト「ん?」
アイズ「ケイトは…悪くないよ?」じっ←目を凝視する
ケイト「瞠目)……
……(くす)
ありがとう^^」
力無く、くしゃりと笑った
ピシッ
心が、軽く軋む音がした
ヒビが、小さなヒビが、押し殺す心が、遺してゆく
僅かな痛みを、心痛を…悲鳴を……上げたい心を、押し殺す慟哭が、聞こえた気がした
哀しみにも似た、祈りに近い…少しでも同じ境遇の人間が減って欲しいと願う心
ぐちゃぐちゃで、整理も付かなくて、哀しくて、やり切れない
痛み以外何も感じない心で…涙を浮かべながら…すぐに何事も無かったかのように振る舞う
ずっと…そうして、耐え続けてきたように――そう習慣づけられた動きを、無意識の内に取りながら
アイズ「ケイト…‥」
ケイト「ん?…どうした?アイズ」
アイズ「戦おう」キリッ!!
ケイト「…‥……」瞠目
アイズ以外『………え?』
ふんす!!!←アイズがファイティングポーズを取り鼻息を荒らす
ケイト「…え?;」
もう一度声を上げた
もう…食器は空になっていた
数分前にコップに注がれて残っていた水が、ケイトを映し、
風と共に揺れて、波紋を残していた
心の動揺を映すかのように――
そうして――僕達は黙って去り、アイズとケイトの朝の2人きりの時間が始まりを告げた