第85章 エラー
~夢の中~
何か、異空間に足元から取り込まれる夢を見た
沈んだ先で、身動きも出来ず、透明な何かに隔たれているように感じる
円筒状の水槽?ガラス越しに、何かを書いている人のようなものが水槽の外にいるのが見えた
「さて…次は何を消しますかな」
人→×
壁面に書いた後、そう呟くお爺さん
端正な顔立ちで、薄い髪を伴った頭を掻きながら力無く言い…
何かに気付いたように、静かにこちらを見やる
「おお…来客ですかな。
こちらは寝台(しんだい)です。
ベッドのようなもの、つまり神様がお休みになる所です。
守り番(もりばん)をさせてもらっています。
ネヒトと申します」
ケイト「ネ…ヒ、ト」
ネヒト「おやすみなさいませ。
よい夢を――」お辞儀
そう言われると共に、眠りに付いた
その後…こんな言葉が耳をついた
ネヒト「この世も世界も隔てられた水槽。
中にいる神以外のものは皆、稚魚のようなもの。
稚魚を養育している感覚に近いですな、神になるまで。
いずれにしても…移ろい行くものでございます。
一つの流れに一喜一憂して、何になりましょう。
拘らず、気にしないのが吉でございます(お辞儀)
癌は消滅させる闇を生み出す存在なので、消すしかありませんが…
創世神の膜は、創世神の主人格を持ったもの以外を主(あるじ)として認めはしないので。
創世神の主人格、すなわち心が、始祖神なのです。
始祖神=創世神の心。
創世神そのものと言って差し支えないと。
だから創世神の膜は異物として排除しようと圧殺してくる。
殺さなければ他の何かが消滅する。
それをさせない為のものなのです…創世神の意思ですので。
始祖神と認められたからこそ、創世神の膜は新たな膜を与えた。
真祖ということです。
自分が自分である為の軸、それすなわち心。
創世神が創世神である為の軸、それが始祖神。
人間で言う心肺。
交代できるのは、同じく膜を与えられたもののみ。
分体でも半身でも写身(うつしみ)でも不可能でした。
全て圧殺されましたからな。
心をなくすことを恐れておいででしたので、それで最初に生み出したのです。
それが創世神の膜を与えるという行為。
創世神の内側でありながら膜を与えられたことにより起こった…事故でございます。
心苦しく思っております…」
暗澹とした表情で呟く