第85章 エラー
いい加減にしなさい、とばかりに軽くぺちりと頬を叩く中…君は笑った
さも…嬉しそうに……
それに釣られて…僕も笑った(微笑)
君のお陰で…僕の弟は、笑えるようになった
見る見る内に回復していった、生きることに前向きになった←4216ページ参照
神の力だけではない…圧倒的な……心の力で、人の心に寄り添う思い遣りで…(思い遣る)心を踏みにじらない、愛する心で
あたたかいよ…本当に(ぽとっ)
満面の笑みで笑い合う光景と、亡き甥が甥と笑う所が浮かぶ
僕の母方の叔父、母の弟も…一緒になって……
彼は気難しい方で、寡黙だった…
僕にとてもよくしようとしてくれた
村で生きていけるように、出ても生きれるように、と貧しいのに金銭までくれていた
頭もいいのか…はたまた偶然か…捨てるだろうことは予期していたようだと、父の日記に書かれていた
それを…故郷を捨てる時になってから知った
出る前…モンスターが村を襲撃するまでは…従弟を、弟として面倒を見させられていた
一方的に絡まれ続けていた、と言った方が正しいだろう…
よく慕ってくれていて…
だからこそ、はっきりと伝えた
ただ一言…故郷と姓を捨てると…
それは、二度と戻らないという意味だということも、正しく教えることにした
下手に淡い希望を持たせては、長い間待つ…なんてことにもなり兼ねなかったから……
……兄と慕ってくれた…小さな、5歳にも満たない弟に
そしたら…村を出る時に、別れ際に、酒を飲もうと約束した
一方的に取り付けられる形で…
10歳の僕が村を出て…故郷と姓を捨てて……数十年が経った
近くに用事があり、不意に頭をよぎって墓参りに寄った時に、備えていた小さなフィアナ像も変わらず大事に磨いて備え続けてくれていた…村を出た時と何ら変わらないまま……小さな頃からずっと僕が持っていた、その時に付けてしまった傷もそのままに……
僕がまだ30の頃だっただろうか……
勇者と村にまで勇名が響いていたことから…女の紹介を求められたりもした
酒を共に飲んだ夜、絡まれた…さぞかしまとわりつかれているんだろう、と
村の人には見つからないように家に泊めてくれた
内密にしてくれた
静かに出来るようにと取り計らってくれた…
本当に…母に似て、素朴で、優しい、温かな家族のままで…僕は安堵を隠せなかった
