第76章 冒険者依頼(クエスト)、来訪
頼む…どうか(こぽぽっ)←水音、泡が立っては消えてゆく
誰か、来てくれ
助けてくれ
頼む――!!
ケイト「!」ぴくっ
フィン「?どうかしたのかい?」
ケイト「いや…何か、声が」
フィン「?さざ波ではなく?」
ケイト「こんな真っ平らで窪みに水一つさえ残ってない状況で?」
腕を左右に拡げ、肩をすくめ、小さく首を傾げる
フィン「ははは^^;
手厳しいね」苦笑
何も残っていない
沖の奥深くまで行ってみたが…
定義上、大陸棚と呼ばれる位置まで続いていた
もう直、端まで歩き終える所だ
が…変わらず、窪地にもどこにも水も魚一匹さえも無い状況は続いた
フィン「あまりにも不自然だ」ぽつり
自然と口を突いて出た言葉に、ケイトは黙ったまま頷いた
ケイト「…行こう。
きっと…深海底に、何かある!」
深海底の入り口付近、そこに立って、ようやく水が見えた
まるで…光も何も反射せず、魚もいない真っ暗な水が……
そこにケイトは迷いなく、神の力を纏って飛び込んだ
水の中でも呼吸が出来るよう、
自身に触れた瞬間に、触れた箇所から水が酸素に変わるよう、身から離れぬよう、神の力で働き掛けて…
僕もそれに倣って、同じく神の力を発動した。
水は得意分野ではないが、難なく発動した。
僕の方が透過力が上な分、精度や無駄の無さは随一らしい。ケイトに言わせるとだが…
そんな言葉を軽く流し、周囲へと目を向ける。
これは…惨(むご)いね
そう、きっぱりと言い切れるぐらいに…海の生き物は衰弱し切っていた。
何が起こったのかは未だわからない
だが…ふよふよと、泳ぐ力もなく、流されるままの弱々しい姿を見て、思った。
ケイト「奥に元凶がいるはずだ」
そのケイトの言葉に、僕も頷いた。
全くの同意見だから。
そして――その推察は、正しかった
集めた水の力だろうか…重く、厚く、純黒の水を集わせ、何かを押さえ込んでいるようにも見えた
そうか…
これが…
騒動の元凶か――!
大きな亀、それを前にして、僕は戦慄した。
精霊だったのだ
海の精霊…
恐らくだが…
海の精霊界、それは深海にあるのだろう
ふとよぎった考え…
それは、憶測の域を出ない。
だが…強ち、的外れではないはずだ。
そう、確信を得た。