第73章 キルアの冒険
次々へと妹の頬へ落ちて行く『兄(家族)の血』――
そこに両親の血が想起し、容易く当時の心境をもフラッシュバックさせ、
甲高い悲鳴が、叫びが、喉から叫ばれ、ダイダロス通りへ反響を上げる…
「いや!!!いやあ!!」
海老ぞりになり、身動ぎし、頭を振り、腕の中で悲鳴を上げ暴れ回った。
「死なないで!!!
お兄ちゃん!死なないで!!!
いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
涙ながらに叫び、咽び泣き、慟哭を上げ、悲鳴を上げる…
それは数時間にも及び、ダイダロス通りで知らぬ者はいない大騒ぎとなった…
だが…地獄はまだ、始まったばかりだった……
兄に「冒険者をやめてくれ」と泣いて懇願し、
悪夢に何度も何度も魘され、飛び起き、
その度に泣きじゃくり、泣き叫び、寝ることにさえ恐怖を抱き不眠症になり
霰粒腫になっても涙は止まることもなく、
著しく不安定になった精神は歯止めも知らず暴走を続けていた…
兄も婚約者も揃って疲弊し、それでも妹を見捨てられず、
別の職場を探そうかと悩んだりしながらも懸命に介護し、その度に幾度も幾度も何度でも宥め、
何か月も努めた甲斐もあってか…やっと健康さと落ち着きを取り戻しつつあり…
…外へ出た
が…たまたま遭遇したベルを見ただけで狼狽し、心配して近寄るその姿に慟哭と共に断末魔を上げ、即座に背を向けて脱兎の如く逃げた。
兄妹の話は割と有名な話なのだが、
誰もベルへの糾弾をせず、決して受け入れず、嫌がらせと切り捨て、挙ってベルの名声を語るばかり…
決して癒えない心の『傷』を背負った妹は、それらにより止めを刺された…
今度こそその精神はぽっきりと折れ、自殺しようとまでする大事件へと発展した。
自殺未遂までされて兄は決意し、妹と婚約者を引き連れ神国へ引っ越し、ベルと決して干渉しない環境を求め懇願してきた。
フィン「……………;
これは酷い…;
想像以上だ。酷過ぎる;」
キルア「粗雑にも程があるよなー;←ポリポリ後ろ頭をかく
って言うか…
傷付けた張本人が、何心配してますって顔で声かけてんだって話。
事情も何も知んねーのに助けられねーもんはねーって思ってんのかよ。
舐めんのも大概にしろってんだ!」ぷりぷり
テロップ『例の兄と同じく妹持ち故の激昂』
