第70章 新天地
ケイト「…」
フィン「君の言った闇は誰もが抱いている。
醜いのはお互い様…
君は、まだ…人を傷付けたり殺そうと意図的にしない分いい方だ。
君の場合は、環境が特殊故…どうにもしようがなかったけれど……
ずっと…人に、力で、数で、屈服しなければ生きていけない「惨めさ」を噛みしめながら、誰にも理解されない「孤独」と満たされない「飢え」の中で、
それでも幸せそうに笑うそれを歪めたくはないから、とめどなく沸き上がる世界そのものへの「憎悪」を、その『慈しみ』を持って、自らをも敵に回した。
どれほどの人達に踏み躙られようと、その数多に膨らみ続ける「闇」をも、『光(慈しみ)』の原動力に変えて、必死に途方もない努力をして、他でもない『自分』と戦ってきた。
闇に任せた後のこと、誰もが『されたくない』「痛み」に「同情」するのではなく、『共感』して―
人を傷付けない為に――殺さない為に――誰一人として、同じ想いをさせない為に―――
ただ、無条件に、人のことを想い、いつだって適当にあしらわず、一生懸命に考えて取り組んでくれる。
その『慈しみ』しか、何一つとして残されなかったとしても…
それを武器にして、憶病者と言われながら、小心者と貶されながら…
それでも、笑ってさえいられたら…その人達が幸せでいられたら…それだけで何も要らない。自分には、もう…決して手には入らない。
その為なら、自分の手だろうが足だろうが何だろうがくれてやる。だがこの心も、魂も、死んでも譲る(腐る)ものか!!
その一心で…理解されない闇もまた、光と一緒になって…自分と戦った。
だからこそ、己という心が壊れずに済んだ。
守ってくれたのは…君の、その優しさだけじゃない…
全てを殺し尽くしたいほど深みを増した闇もだ」
ケイト「……
そっか…
殺してやるって思った時…
お前が死ね!!!!って…何度も何度も、自分へ矛先を変えることが出来てたのも…」
フィン「ああ…だから…
終末神は、君へ自ら攻撃を仕掛けなかった。
何度も殺すチャンスはあったのに、頑なに…
やるとしても…精神攻撃だけ……
浄化して欲しかったんだ…ただ、世界を滅したいという『欲望(終末)』だけを。
だから…始祖神として、復活を遂げた。
世界を、人を、全てを滅させようとする…その『意思(終末)』に打ち勝てる存在として」
