第66章 穢れ
フィン「心の傷が少しでも癒えて、減っていけば…
傷を負う人が、負わせる人が少しでも減れば…
そう考えられる人が優しいのだと僕は思う。
唯々諾々では、成長は見込めない。
他人のことを自分のことのように考えることが出来る人が優しい」
ケイト「単純に私がされたらやだから気になってるだけ。
そういう嫌な経験って多いから、経験則で。
これって保身?」
『逆』
フィン「本当に保身なら自分の為にばかり動くさ。
相手の気持ちや心痛を最優先に考えている時点で、それは保身とは真逆と言える」
一人の人として見てくれることも大事、傾聴も、決め付けないことも、偏見を持たないことも。
理想を叶える為に振り回す、力を貸した側の予定ややりたいことや理想を力尽くで踏みつけたままでは✕。
一人一人、本人のしたいこと、予定、都合、全部気にしたり考えたりするのは、相手に幸せでいて欲しいから。それを重んじているから。
見返りや力や変わることを求めていない。幸せになることを求めている。
だからついていこうと思える、らしい。
昨日は人の身、今日は我が身。
少しは人のことを自分のことのように考えられる、そんな人としての温かみを持った方がいい。
心を、卵の状態のそれを、壊して、踏み付けて、高笑いしておいて…
今更、何を望めと言うの?
私を痛め付けるのが楽しいと笑っていた人が、何で善人とされるの?
私を、私が壊すことを楽しいと思い込ませて笑っておいて、それでも何でそうしてきた人達の幸せを願うのか、その意味がわかっているの?
望みも、やりたいことも、何も残されなかったからだよ。
深淵以外――何もない
謝っても、何をしても、壊された卵は―二度と孵らない――
壊すということの代償は、計り知れなく大きい。
死んだ所で消えない、殺した所で消えない、生き地獄など生温い。炎天の劫火の中で延々に過ごせ。
たとえ殺したとして、それは私の自己満足に過ぎない。
何よりそれでとばっちりを食うのはその家族と友人達だ。死を味わって欲しくはない。
だから――あの世で、より強く裁きが下ることとなる
何もしなければしないほど、一方的にしてきた相手が償うべきとされる罪は相対的に増え、重みを増して行く。
一番の復讐は…何もしないことだ。害となる全てを、刺激を、与えないことだ。