第66章 穢れ
同じ人を、増やしたくないから。
同じ境遇者を、凄惨な目に遭う生殺しの生き地獄を味わう人達を。
振り回されるがままで、抵抗も反発も赦されず、苦しみ痛め付けられ続ける人達を…
そんな人達を…もう、見たくないから。
意識せずにやれば、許されるような内容ではないから。
もしいい人と捉えるとしても…私の感情が、傷が、そんな私を許さないんだ。
あの当時の感情が、傷が、私を掻き立てるんだ。
だから…あいつは敵だ。あの在り方を変えない内は」
フィン「うん…
君にとってみれば、いじめっ子や父をいい人とするも同じだからね。
土台無理だし、それを善とする人達とはどうしても分かり合えない。さぞかし恵まれてきてそんな経験も一度として無かった人達とはね」
ケイト「チクリと言うね;」
フィン「お互い様さ。
まともに正当な評価も出来ない、甘やかされ続けた輩の正義なんてろくな正義ではない。
おべんちゃらな、上辺だけしか見れない、自分の思い通りになることしか考えられない、そんな歪んだ正義だ」
ケイト「…そうだね。
私はさ…人を見分ける上において、一番大事なのは育った環境だと思う。
だって…今こうしてしていることにも、重みが違うから。
本来なら、悪いことばかりされて反抗も赦されないまま殺され続けていたら…悪事に手を染めるのに抵抗がなくなっていくはずだ。
けど、私個人が生来からそうは思わないと確立していたからしなかった。それ自体が凄いことだって、神様から教わった。
切迫していればしているほど、八つ当たりや激情のままに暴れることはよくあるって。
だから…一番大事なのは長く身を置いてきた環境、そして…その上で今している行動だと思う。
弱肉強食で弱者は殺される世界で生きてきた上での殺しと、甘やかされて死も知らない環境で生きてきた上での殺しは、全くもって重みも意味合いも違うから。
だから身近な死も知らない彼の殺しは…未来の白蘭を怒りに飲まれて殺した後も、現在で自分の手でデイモンへ止めを刺しても笑って過ごしていられる感覚は…山本を歩ける上に戦える状態にまで回復させた今の白蘭への風当たりは…誰がどう見ても悪であり、異常だと思う。
そういう人ではないなんて理屈で、現実が、過去が、折れ曲がる訳がない。罪が消える訳もない。神様が言っていたのはそういうことだ」←2301ページ参照
