第66章 穢れ
母上「よいですか?
武家の生まれなのだから、武士になるのは当然のことです。
武士ではなく、立派な侍になりなさい。心身共に」
「はい!私は、あなたや父上のような立派なお侍になります!!」
そう誓いを立てたのは、7歳の頃だった。
しかし…十を過ぎた頃、事件が起こった。
とても良い天気で、日差しも心地よく、そのまま原っぱで寝入ってしまったのだ。
夕暮れ時まで寝過ごし、「どんなに遅くとも夕暮れまでに帰る」という禁を破ってしまった。
家に着いた頃には…日が逢魔が時で沈んでしまっていた。
父上「今日一日外で過ごせ!!」
「はい!」
母上「凍えてしまいますよ!」
父上「黙れ!そんな柔な鍛え方はしておらん!!」
母上「せめて…せめて食事だけでも中で」
父上「ならん!!!
今日は外で食べろ!!」
「はい!!」
半分涙目になりながら…必死に叫んだ。
ここで中に入れてしまえば、他に示しが付かない。
そう意図してのものだということを、私は幼いながらに気付いていた。
出てきた料理は、どれも温かいものばかりで…温かみが長持ちするよう、長芋でとろみを付けられたものしかなかった。
だが…一つだけ問題があった。
冬になる手前の上、夜の冷え込みが激しい頃合いだった。
しかも格好は昼に出かけた時のもの。
軽装で寒さが厳しい時分には身体に堪えるものだった。
凍えるような寒さと、身へ打ち付けてくる風に…なるべく触れる面を狭めようと身を縮め、かじかみながらも震えるばかりだった。
その寒さに身を震わせている中…母上が外へ出てきた。
母上「……竹若丸…竹若丸や」
声を掛けられてようやく顔を上げる。
その時、母上が玄関先から、ずっと俯いていた私に目を向け微笑みかけてくれていたことに気付いた。
母上「…(すっ)←目を上に向ける
星が綺麗ですね」
「……はい」ガタガタ
口が情けなくもガチガチと鳴らしながらも、頑張って返事を返した。
声までも震えていたように感じる。
その中、そっと母上は私へ歩み寄り、傍に寄ってきた。
母上「ああ。
洗濯物を一つ、干し忘れていました」そっ←肩にかける
そう跪いて目線を合わせながら私の肩にかけてきたのは、見慣れた半纏だった。
「!これは父上の
母上「しーっ」内緒ポーズ
(暖かい…)じわっ