第1章 幼少期
他愛もない会話を交わし
(普段どんな任務してるのーとか、海越える時どうやってるのとか。
雹牙は大きな鷹に掴まって飛ぶらしい、凄い!)
一刻ちょっと、程経ったろうか?
城下近くの海岸だと言われてにょっきり顔を出して景色を眺めております。
港に着いたのがお昼過ぎだったから
もうちょっとしたら夕刻だろうか
日の高さと色で時間を計算しつつ前を見たらぽつぽつと町並みが見えてきた
やっと着いたかぁ
「雹牙、ここ?」
雹牙の方を向いて聞いたら笠で隠した顔が、目が柔らかくなるのが分かった
「ここが岡豊城だ」
「あ」
城を遠目に、少し海岸に目を向けたら何かが気になったのでちょっと寄ってもらった
うん、雹牙「?」で一杯になってるとこ悪いんだけど
何となく放って置けなかったんだよね
自己満足でも何とでも仰い!
馬から降ろしてもらって、海岸に佇む小さな影に近寄ってみた。
さらさらと静かな砂の音を鳴らせて
「どうしたの?」
「わっ」
体育座りして俯いている子供の顔を覗き込んだら逆に声を上げられた
なんでじゃ。
見た感じ近所の漁師の子供だろうか?
くたびれた着物を着た少年だけど私と同じ位の年かその上か
「びっくりしたー、あいつが来たのかと思った」
「あいつって?」
「お前みたいに綺麗な着物を着たヤツだよ、オレ今日あいつに酷い事言っちまって・・・」
「ふーん・・・何て言っちゃったの?」
「あいつ、自分の見た目一番気にしてるのに鬼子って」
「ふーん・・・」
そこまで会話したとこで少年が我に返った様にばっと此方を見て青ざめた
「お前!その着物・・・どこかのお姫様かっ!?」
およ、やっと気付いたのか少年よ
こてりと首を傾げて微笑んで
「市です、よろしくね」
と右手を出そうとしたら背後から威圧感
雹牙やい、何してるのかね
「此の方は尾張の姫君だ、首を跳ねられなかっただけでも救いと思え」
ギロリと睨むと少年は驚き走り去って行った
雹牙の思わぬ行動にポカンとしていると
視線に気付いたのか無言で先を促され馬に乗る。
一体何があったし。
うんうんと考え込んでいたら城に着いていて
迎えに来ていた黒羽に顔を覗かれてた。おっとごめん。
後ろでやってしまったという顔をしている雹牙には全く気付かずに