第1章 幼少期
「市っ!」
城への帰りの途中妙な気配に囲まれた
鋭い松寿丸の声が私を呼ぶ
私は松寿丸を背に庇って付きの二人に目配せをすると
二人も私達を背に、庇う様に周りを見渡した。
「殺しちゃダメ、生かして情報を吐かせるの、市も動くわ」
「「御意」」
ポツリと交わした的確な指示の後
殺気と共に武士と思わしき男達が周囲を取り囲む
「そこの小僧と小娘を置いて行って貰おうか」
「この御方を織田の姫君と毛利のご子息と知っての狼藉か?」
声色からやや、黒羽が怒りを抑え冷静に情報を聞き出して行く。
端から見たら黒羽って丸腰だから舐められてるのかも・・・
「たかが付き人が知ってもどうする事も出来まい、死にたく無かったら餓鬼を二人とも寄越すんだな」
「話にならんな」
雹牙がヤレヤレと溜め息を吐いた。
それが気に障ったのかリーダー格らしき男の顔に青筋が走る
短気だねー
心配そうに私の顔を伺う松寿丸に大丈夫だよー、って笑い掛けてから口を開く
「毛利と織田を仲違い、させる気ね?」
全員の視線が一気に私に向く
というか、物理的に視線が刺さりそう・・・
「市?」
訝しげな松寿丸の言葉にコクリと頷く
「私が兄さまの名代で、毛利に滞在中に、私に何かあれば、織田は毛利を許さない」
「成る程、逆に市が我に害を与え、父上と市の兄君との仲違いをも狙ってると言う訳か」