第1章 幼少期
「彼を知り己を知れば百戦危うからず・・・其れは何だ?」
あー、これ有名な理論だよね
「組織の在り方、だっけ。
敵を知って、自分を知れば負けない・・・自分を知って、相手を知らなければ勝算は5分5分。
敵も自分も知らなければ、ただの運任せ・・・でもこれ」
勝つ為の理論じゃなくて負けない為の理論だよね・・・って言ったとこで我に返った。
「其方も年に粗ぐわぬ聡さを持ち合わせているようだな」
「・・・うっかり」
「あの会話で隠してたつもりか戯け」
ついつい家に居る気分で話してたよ私ったら迂闊!
何と無くだけど、黒羽と雹牙も溜め息吐いてるんじゃなかろうか。
「やっぱりやったよこの子」的な意味で!
ちょっとイジケて俯いてたら正面から頭をポンポンと優しく叩かれた。
「其方が滞在中は退屈しそうにないな」
「松寿丸さま?」
「さま、は要らん松寿丸でいい、市」
そう言って微笑む松寿丸は幼いながらも凛々しくて・・・
兄さま、私は今回の人世初のお友達が出来たかもしれません。
・・・男の子ですけれど、いいよね?
「父上の許しが出たら城下にでも行こうぞ」
「急に言って、怒られないかな?」
「市の忍も居るのだから平気だろう」
「・・・いつから気付いてたの?」
「ついさっきだ、此れでも気配には聡いと自信があったんだが
市に問いを掛けた時に一瞬だけだが揺らぎが生じた
だが、ずいぶん腕の良い忍を付けてる様だな
1人か?」
「ううん、2人
2人とも大切な家族・・・」
きっと揺らいだのは意外と心配性な黒羽さんです松寿丸。
雹牙は逆に死んだ魚の様な眼になって無心で遠くを見つめて居ると思います
だから余計に気配が無いんだと思います!
「明日、松寿丸にも紹介するね」
「ふん、好きにすればいい」
私が笑いかけてそう言ったら
そっぽを向いて素っ気無く返された
あ、でもちょっと耳が赤い・・・?
「松寿丸は、市の初めての、お友達なの」
「・・・我も友と呼ばんでやらぬ事もない」
これが前世でよく聞いたツンデレという奴ですか?
ポツリと聞こえた声はどう聞いても照れてらっしゃいます。
この世に産まれてからできた新しい縁は大事に大事にしていきたいなと。
心に決めて決心していった。