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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第6章 謎の少年




「あんたたちみたいな雑魚敵の相手なんて、私たちで十分なんだから」


 獣を思わせる鋭い瞳が、へたり込んでいる出久の姿を捉えた。ぎゅっと冷たい手で心臓を掴まれたような感覚になる。少女が不思議そうに目を眇めて言う。


「誰? 君。偶然居合わせたって感じには見えないけど」


 少女の視線が下に降りていく。その目でなぞられた箇所が、ナイフか何かで切り開かれたように冷たいような熱いような耐え難い感覚を帯びていくのをこらえながら、出久はただ身体をこわばらせているしかなかった。


「それ、雄英の制服だよね。翔のクラスメート? 尾けてきたの?」


 翔。少女の口からその名前が出た瞬間、出久は思わず顔を上げた。何だろう。出久のの今の仕草を見て、少女の金の瞳に何かの感情が走った。ああ、と。必ず起こるとあらかじめ知っていた事象が目の前に立ち現れて、ああ、これがそうか、と合点するような。


「どっちにしろ、死にたくなければ今すぐ逃げることだね。死ぬよ」


 その言葉を最後に、少女の視線は出久から外れ意識も絶え絶えにうずくまっている二人の男に向けられた。ナイフで切り開かれ、中に詰まった赤い組織が身体の破損を訴える熱のような痛みが、その幻覚が、急速に遠のいていく。


「クッソガキども……なめ腐りやがって……」


 地獄の底から響くような声で眼帯男が呻き、出久は目をむいた。あんな馬鹿でかい狼に猛スピードでタックルされたのだ、普通なら即気絶していてもおかしくはない。しかし男たちはビルの壁を背にし、よろつきながらも何とか立ち上がってみせたのだ。


「こっちはプロだぞ、こんな……なめやがって……殺してやる!!」



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