第19章 赤と青
「今からする質問に嘘偽りなく答えろ。
分かったな?」
「...」
相手は海軍なのだろうか。
「1つ、お前の名は?」
「......ナツキ」
私が熾天使だとバレているのだから、今更誤魔化しは必要ない。
「能力は?」
「...そんなものないわ」
ふいっと顔を背ける。
「嘘をつくな、能力は」
髪を掴まれ、痛みに顔が歪む。
「自分の置かれてる状況が分かってねぇみたいだな。
手っ取り早く、分からせてやるよ」
「何を...」
男はナイフを取り出し、笑った。
「さぁ、愉しい鳴き声を聞かせろ」
「あぁッ...!」
左脚の健を、躊躇いなく切りつけられた。
これでは自分の脚でまともに逃げ出すことは困難だ。
「堪んねぇな、その声」
それからというもの、尋問という名の拷問は想像を絶するものであった。
解放されたのは何時間も経ってから。
身体はボロボロで、目を背けたくなるものだった。
首輪を引かれて、自分の檻へ投げ込まれる。
頬や身体で感じる冷たい感触に、少しだけホッとした。