【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第5章 uncomfortable fact
「…何があった?」
しばらく俺の腕の中で震えていた皐月は、急に我に帰った様子で慌てて顔を拭うと、最初に想定していた通りの強がりな…でも、どこか照れた様な顔で、ごめんと短く告げた。
すぐにでも帰ろうとする皐月を、こんな状態で帰られたら気になって仕方ないだろと強引に呼び止めて今に至る。
「本当に恥ずかしいところ見せちゃってごめんなさい。」
「それは別にいいけどさ…」
食い気味に迷惑ではないと伝えると、また皐月を黙らせてしまう。
「何があったか…俺に話すのは嫌か?」
今度はゆっくりと問えば、皐月は俺の様子をしばらく観察した後に、おずおずと口を開いた。
「別に嫌とか…そういう事じゃなくて…さっきね、蛍君に振られちゃったんだ。もう関わりたくないって言われちゃった…。」
皐月がへへへと、冗談めかして笑うので、余計に痛々しく見える。
そして、俺自身も冗談だとしても笑えないくらいの衝撃だった。
最近、月島の皐月に対する態度がおかしいのは見てれば分かる。
それでも、ふとした拍子に皐月の事を追ってる視線や、その眼差しは月島はまだ皐月が好きなんだと如実に語っていた。
だから、間違っても月島が皐月を振るなんて…しかも、わざわざ傷付けるような言葉を選ぶなんて、信じられなかった。
あのボケ…。
何してんだよ!
皐月が月島のせいで泣いてて、月島の為に強がって見せている。
その事実に拳を強く握り込んだ。
俺なら…絶対にそんな事しない。
俺なら…皐月の事、笑わせてやる。
あんな奴やめて、俺にしろよ。
好きなんだよ、皐月の事が。
そう言い掛けた言葉を飲み込む。
伝えれば、皐月をまた俺の腕の中に抱き寄せられるかもしれない。
でも…。
仲が拗れる前の皐月と月島の様子を思い浮かべてしまう。
俺が笑わしてやりたい。
その思いは確かなのに、思い出された皐月の笑顔に、俺の好きな笑顔に…月島に向けられたそれに…、俺じゃないのか…と思い知らされた。
「皐月…お前、月島と及川さんを会わせたりしたか?」
皐月には笑っていて欲しい。本当の笑顔で。
例え、それが他の奴の隣でも…。