【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第5章 uncomfortable fact
「何って…。」
菅原さんを押し除けるように、こちらに進み出た和奏の制服が乱れていて、先ほどまで見せつけられた行為が頭の中でリピートする。
何…してるんだよ?
及川さんが彼氏なんじゃないの…?
何で菅原さんと…?
聞きたいことは沢山あるのに、まともに口から出てこない。
そもそも、僕に2人のことを問いただす資格なんてあるんだろうか。
今、僕はどんな顔してる…?
泣き顔でなければいいんだけど…そんなのダサ過ぎるから。
「何って、そんな無粋な事は聞くものじゃないだろ。月島だって子供じゃないんだし、何してたかくらい見ればわかるだろ。」
いつの間にかこちらを振り返った菅原さんが、余裕のある表情で、面白おかしそうにそう言えば、急にたった2つの歳の差が凄く大きな物に感じて、敗北感に包まれる。
「…もう…いい。」
捨て台詞にしては、心許ないそんな言葉だけ残して、目の前の残酷な現実に背を向けるようにして、部室を出た。
敵前逃亡の要素は充分だけど、僕の中の微かなプライドが、走って逃げる事だけは許さなかった。
先日の和奏と及川さんを、目撃した時とは違う。
僕は和奏の事なんか、とっくに気に掛けてなかった。
そう自分に言い聞かせて、走り出したい気持ちを抑え込むようにして、それでも早足に部室を後にした。
学校から少し離れた公園まで来て、やっと立ち止まる。
これ以上、歩く気力も残ってない気がして、公園の端のベンチに吸い込まれるように腰を下ろした。
何かを考えようと思うと、先程までの2人の行為しか思い出せず、本当に泣きたい気持ちになった。
情けない顔を人に見られなくなくて、視線を地面に下ろすと、視界に人の靴が映り込み、再びゆっくり顔を上げた。
こんなに人が近くまで来てるのに気付かないなんて、余裕なさ過ぎるでしょ…と少しだけ持ち直した冷静さが、彼女の姿を捉えて一気に散っていく。
「和奏…。」
「蛍君…。」
そこに立つ和奏の必死な様子に、こちらを見つめる表情に…いつもなら、揺さぶられるんだろうけど、
流石にこの状況で、僕もそこまで馬鹿じゃない。
何だか、心に冷たいものが広がって行く。
「何で追い掛けて来てるのさ。」
何で、あんな行為の途中の菅原さんを放置して、僕なんかを追い掛けて来てるのさ。