第5章 終局
その後、晴れて私は退院となった。
といってもしばらくはリハビリに通う日々だ。
クラウスさんやギルベルトさんにも助けていただきつつ家で療養。
けどだんだん、普通に日常生活を送れるようになった。
それからライブラの方にも顔を出し、またデータ打ちの仕事などをするようになった。
ただ魔術の先生の選定は、なかなか上手く行ってないらしい。
単にその力が強いのと、教えるのが上手いのとはまた別問題だ。
残念ながらヘルサレムズ・ロットは、最前線で戦えるレベルの人じゃないと、やってけない街。教えるのが上手い人はなかなかいない。
その日もライブラで、スティーブンさんは資料をめくりながら言う。
「本格的に学ぶのなら、やっぱりヨーロッパかな。どうしたって魔術の本場は向こうだし。
定時連絡ついでに声をかけたら、向こうも君に興味を持ってくれたよ?」
私はキーボードを打つ手をピタッと止める。
クラウスさんをそっと伺うが、あちらもパソコン作業で無反応だ。
まあ、私の決断を応援する、みたいなことを言ってくれるんだろうけど。
「もう少し、考えてみます……」
ぎこちなく笑うと『そうかい? まあ無理をせずにね』とスティーブンさんも、それ以上は言ってこなかった。
…………
「もちろん、君にはどこにでも行く権利がある」
クラウスさんが重々しく言った。
「君が生まれもった才能は開花されるべきだし、重い試練から解放され、新しい道に進みたいとも思っていることだろう。
君がどんな道を選ぶのであれ、私はそれを最大限に支援したいと思う」
「いえ、そこまで大げさには……」
あとそれ、ピロートークの議題には少々重いのでは。
私もクラウスさんも、今、裸でベッドの上なんですが。
クラウスさんはたくましい腕で私を抱き寄せ、キスをしてきた。
目を閉じ、舌を絡めていると、そっと手が下半身に伸ばされる。
抵抗はせずに弄られてると、下半身が少しずつ熱くなっていった。
「……だが、君と離れがたいのもまた真実だ。私と君は婚約しているのだし」
「いえ、ですからその件は――」
そこらへんは、もう少し落ち着いて考えようと何度も言った。
しかしクラウスさんは頑として譲らないのだ。