第5章 終局
そしてまた何日か経ち。
やっと外泊許可が出て、一旦『家』に帰って来れた。
長期間いなかったはずだけど、家はきれいに手入れがされていた。
私は車イスを押してもらい、懐かしい場所をめぐる。
「うわあ!」
すごい。庭に見事なバラ園が広がっている。
ん? 今、バラの季節じゃないはずなんだけど。
「君のため、私の持つ技術を全て投入した」
クラウスさん、私の感嘆を目にし、若干のドヤ顔であった。
ガーデンには真っ白なガゼボ(柱と屋根だけの休憩所みたいなやつ)もしれっと増設され、どこのセレブのお庭ですかという具合だ。
ギルベルトさんが無駄のない動きでティーセットを準備する間、私は車イスでバラ園を案内してもらう。
「これは青バラとして有名なブルー・ムーン。これがドゥフトボルケ。『香りの雲』という意味で――」
「すごいですね。きれいです!」
語彙(ごい)が少なくて陳腐(ちんぷ)な感想しか述べられんが。
「あのあたりに、つるバラを使ってアーチを作りたいと思っている。
カイナは、バラの色に希望はあるかね?」
「いえ、クラウスさんの良いように……」
というか、ここ一応私の家なんだけど……。
…………
ティータイムが終わり二人――時々ギルベルトさんも加わり、楽しくお話した。
クラウスさんが一時期いなかったせいで、ライブラが地獄の忙しさだったこと。
私が昏睡状態になってから、クラウスさんも仕事の埋め合わせと私の見舞いで、かなり忙しかったこと。
『牙狩り』の人たちとも、どうにか和解。彼らは無事帰国したこと。
私の収監命令と観察命令は完全に解除されたこと……などなど。
……楽しい、か?
ま、まあ。とにかくなべて世は事も無し。
問題ごとは全て解決し、めでたしめでたしなのである!
……うん。
…………
その後、日も暮れ私たちはディナーに出かけた。
そして私たちを家に送り届け、ギルベルトさんはご帰還。
私はクラウスさんに手伝っていただき、久しぶりにお風呂。
それから抱っこされ、寝室に運ばれた。
パジャマに着替え、懐かしいベッドにボフッと沈み込む。
「あー、やっぱり我が家はいいですね」
枕に顔をすりつけ、疲れた身体を癒やす。
足もかなり動くようになってきた。
すでに退院の日も決まっていた。