第5章 終局
リンゴを食べ終えると、クラウスさんは私を寝かせ、布団をかけた。
そのついでにキス。久しぶりでちょっと恥ずかしい。
クラウスさんは顔を上げて微笑んだ。キリッとしてカッコいい。
「点滴も今日で終了だ。明日からは本格的なリハビリを開始となるらしい。
何かやりたいことや、食べたいものはあるかね?」
やりたいこと。うーん。
「アレですかね」
魔術の勉強の続きとか、花を育てるとか――と続けようとしたら、
「!!」
クラウスさん顔を瞬時に赤くし、
「カイナ! レディの君が、そんなはしたないことを言ってはいけない!
確かに私も君と気持ちを同じくしているが、今は君は入院中だし、何より病院でそういった行為は不道徳極まりなく――」
……おい。
「あのですね。私、具体的なことは何も言ってませんが。
それと、後ろに皆さんがいらしてますよ?」
「!!」
クラウスさん、バッと背後を向く。
『…………』
そこには花束持ってお見舞いにいらした、ライブラの皆さんがいた。
「――!!」
凍りつくライブラのリーダー。
「あのなクラウス。あと少しの辛抱なんだから、そこは大人の余裕を見せてやれよ」
「旦那、旦那。半年の禁欲生活! 男として気持ちは分かるぜ!?
そこでだな! 病院で上手いことヤるテクを100ゼーロで伝授して――」
「あーら! お熱いわね、クラっち! ンもう! 初々しくて可愛いわぁ!」
スティーブンさんにザップさん、K・Kさんであった。
「ち、違うのだ、皆! これは――!」
クラウスさんのカッコよさはログアウトしました。
後には顔真っ赤にして言い訳する、見苦しい大人だけがおった。
「23番ストリートね、区画クジで超評判のチーズケーキ専門店が移ってきたって。通常食に戻ったら買ってきてあげるよ」
「マジっすか!? ありがとうございます! あ、その白いとこ、ちょっとすっぱいから蜜たっぷりの場所だけ下さい」
「好き嫌いするんじゃないの。ほら、あーんして」
「あーん」
チェインさんにお見舞いのゼリーを食べさせていただいたのであった。