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【血界戦線】紳士と紅茶を

第5章 終局




「…………」
 さすがに驚く。
 ギリギリまで信じ、私が出来なければ出来ないで、すぐ次の策を考える。

「でも、そう簡単に、分かる、んです、か……?」

 教えてもらえるなら、最初からそっちルートに行った方が良かったのでは、とも思うのだけど。

 まあクラウスさんの表情から察するに、安易に頼るには危険な相手ということなんだろう。

「私の命を賭けた取引にもなる。だが、君の命のためだ。どうということはない。私は必ず生還してみせる!」

 ……神性存在からこの世界を守るためではなく『私の命を救うため』と、ポロッと本音を言いおったな。

「…………」

 何か脱力した。なんて自分勝手な人なんだ。

 もちろん、世界の均衡を守るのが最優先。
 でもその中に、当たり前に私の生存を組み込んでる。


 ――負けた。

 
「クラウスさん、愛してます」

「私もだ。だから――」

「私ね、多分あなたを愛してるって初めて言ったんですよ」

「……?」

 クラウスさんがやっと怪訝(けげん)そうな顔をした。
 でも生死の境にある私が、うわごとを言ってると思ったんだろう。

「カイナ。少しの間、眠っていて欲しい。あとは私に任せたまえ」

 冗談。何の勝負に出る気だったのかは知らないけど、クラウスさんを窮地に追いやるマネはしたくない。

「大丈夫です。だいじょうぶ、ですから……」

 目がかすむ。クラウスさん、マジで私を短期封印する体勢に入ってる!
 待って待って待って! 思い出したから! 封印しないでー!!
 
「ちょっと、いってきます……すぐ、戻りますから」

 そう言って微笑んで。

「カイナ!!」

 私は――死んだ。

 …………

 …………


 夢を見た。

 私は真っ暗闇の中にいた。
 そこに私以外に、もう一人の人間がいた。

 ものすごい汚くてボロボロの少女だ。
 これでもかというくらい、ガチ泣きしていた。

 あまりにも悲痛に泣き叫んでるのだが、最初、抱きしめるのをためらってしまった。

 とにかく傷だらけなのだ。

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