第5章 終局
私自身が失敗して痛い目を見るだけならまだいい。
でもクラウスさんは……私の茶番に巻き込まれてしまったクラウスさんは……。
「11式 旋回式連突(ヴィルベルシュトゥルム)!!」
さすがライブラのリーダー。牙狩り精鋭数名との戦闘で一歩も引いていない。
でも……さっきより、確実に押されてきてる。
クラウスさんの方が強いのに、なぜ押されるか。
牙狩り本部の人らは、最悪、クラウスさんを殺す気でいる。
でもクラウスさんは退けたいだけで、殺す気はない。それで自分が不利になろうとも。
だから、本気にはなれないのだ。
「!!」
クラウスさんが私をチラッと見た。
ビクッとして、視線をそらす。言えない。私が術式を解除してくれてると信じてるのに、何も出来てませんなんて、そんなこと、とても言えない!
でもどうすれば。このままじゃ、いつかはクラウスさんが死んでしまう。
もしかしたら、逃げて別の場所に潜伏するのかもしれない。
いや同じことだ。牙狩りの人らは前回のチンピラたちとは違う。
追跡の手を緩めないだろう。
なら私が自力で解くしかないじゃないか!!
私は顔を上げる。
出来る! やれる! 私なら絶対に出来ると信じよう!
クラウスさんが信じてくれた、私自身を!!
十分後。
……やっぱり無理だー!!
一つの式も解けねえー!!
いいいいいや為せばなる!! 絶対どうにかなる!!
やるんだ、私! 頑張れカイナ!
さらに十分後。
「カイナ!!」
クラウスさんの声がする。でもずいぶんと遠い。
式は解けてませんが封印もされてません。ご安心を。
ただ私は死ぬらしい。
今、私は地面に倒れ血の海の中。致死量分の失血はしてるので死亡不可避である。
ダメだ。意識持たない。
残基……じゃない、死亡回数って使い切っちゃったかな。
まだ大丈夫だよね?
「カイナ――!!」
そうだ、忘れてた。
なぜこんな状況になったのかというと説明するとですな――。
そこから先を考えようとして、私は死んだ。
意識が深い闇の底に落ちていく中、最後の鍵が外れる音がした。
光の渦が歓喜で狂ったように笑い続けている。
そして私は、神性存在を呼び出す『召還門』になった。
マジか!