第5章 終局
ちなみに交渉のやりとりも平凡であった。省略すると、
『同胞よ! 彼女は危険な存在ではありません! 彼女自身による術式解除のため今しばらく時間をいただきたい!』
『クラウス・V・ラインヘルツ! 牙狩り本部を敵に回すつもりか!!』
『世迷い言で世界を崩壊させる気か、痴れ者が!!』
『その小娘を寄こせ! 完全封印術式に入る!!』
『お分かりいただけないか。では仕方ない。ブレングリード流血闘術――推して参る!!』
……多分、双方とも最初から交渉する気ゼロだった。
で、さっさと戦闘に入ってしまった。
「こちらはHLPD(ヘルサレムズ・ロット警察)特殊部隊!! この地区の私闘は認められん!! ただちに――ぐぁっ!!」
こちらは一桁人数だというのに、武装警官隊が一切近づけないのだ。
特殊武装警官隊は撃破。軍用ヘリは撃墜された。
絶対に人外が混じってるだろう、牙狩りども!!
ともかく戦闘の余波でビル一個がぶった切られた。
あたりは紛争地帯と見まごうばかりの、一面のガレキと土煙であった。
誰も近づけない。
……で、嵐の中心点たる私。
肝心の術式解除が一切出来てないのだ。
くみ上げた解除式は失敗。というか通らなかった。
私の中の巨大な術式の壁に、爪痕すらつけられない。
どうしよう……。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。
血の十字架の向こうでは、激しい戦闘の音がする。
時折、私の方へ攻撃もくわえられるが、クラウスさんの作った防御陣は揺るがない。
今のところは。
色々試した。今の自分で出来る、限界の解除式をぶつけてみた。
でも壁はびくともしない。ひっかき傷すらつけられない。
「嘘でしょ……何も出来ないとか……マジ、役立たず」
手が震える。こぶしを握りすぎて皮膚が白くなった。
今の状況、アニメで言えば、最終話のBパートくらいでしょ!?
私の術式解除が完了すれば、あとはエンドロールくらいしか、やることが無い!
なのに!!
全力でやって失敗したなら、まだカッコがつくが、現実には最初の一式目の解除すら終わってない惨状だ。
「どうやって収拾つけんの、これ……」
呆然とつぶやいた。