第5章 終局
数時間後。
私は困り果てていた。
全てを終わらせるには、私自身にかけられた『神の召還門』の術式を解除すればいいだけ。
そうすれば私は『世界を終わらせるアイテム』ではなくなり、ただの人間に戻れるのだが。
だが。
だが。
解除出来ないー!!
あれだけ前振りしといて!!
最初の一式目の解除すら無理!!
難易度が鬼なのだ。ナイトメア。超ハードモード。とにかく無理無理無理!!
でも、そんなこと言えやしねえ。
だって目の前では。
「ブレングリード流血闘術117式!! 絶対不破血十字盾(クロイツシルトウンツェ・アブレヒリヒ)!!」
とにかくスゴい感じの戦闘が目の前で繰り広げられているのだ。
紅き光が交錯し、閃光と振動と轟音が響き渡る。
地響き……というか地割れがマジで起こってる。
ちなみにここは公園。普段はヘルサレムズ・ロット市民の憩いの場だ。
今は限りなく全壊に近い半壊状態だった。
これは、クラウスさんと――吸血鬼退治の精鋭『牙狩り』の激戦によるものである。
『牙狩り』。ライブラの親元みたいな組織の人らである。
彼らは、私が術式を解除する可能性を一ナノミクロンたりとも信じてない。
『”生きた召還門”を放置すれば、百年以内に世界が終わる。だから封印しとけ』な発想で、私を封印しに来たのだ。
「でも、どうすればどうすれば、どうすればいいんですか!!」
……ちなみに。
ここに至るまでの数時間に何があったか。
あのアパートの爆発はもちろん『牙狩り』連中の仕掛けたものだった。
ただアパート脱出以後の展開は、前回の襲撃とほぼ同じ。
違うのは敵の人数が数人ってことくらい?
クラウスさんは私を連れて逃げて、公園あたりで追い詰められた。
追い詰められたというか、被害の少なくなる場所を探してたっぽい。
彼は前回と同じく『血楔防壁陣(ケイルバリケイド)』という巨大な血の十字架で私を保護すると、追いかけてきた同胞の人らを説得したのだ。だが交渉は決裂し今に至る。