第5章 終局
「買い物を無事に済ませられて何よりだった。サーモンサンドも売っていたし」
……ノーコメント。悪は滅びた。そういうことで。
あ、そのとき霧の向こうから、静岡的なクリーチャーが『ぐわっ』と襲いかかってきた。
だがクラウスさんは一顧だにせず、パンチの一撃で排除!
吹っ飛んだクリーチャーは道路にてバウンド、そのまま巨大トラックに挽きつぶされた。完。
「そこの公園のベンチで朝食にしよう……大丈夫かね、カイナ!?」
「あ……はい」
私はこめかみを抑えつつ、クラウスさんに連れられていったのであった。
この人に逃亡生活の難易度とか、全然関係なかった……。
い、いやいやいや。負けるか!
いつか守られる立場を脱して、私がクラウスさんを守るのだ!
…………
「はあ~」
私はご機嫌で畳(たたみ)をすりすりゴロゴロ。い草の匂いが気持ちいい~。
「畳は覚えていたのだな。良かった」
カバンを置きながら嬉しそうに言うクラウスさん。
新しいアパートは日本風な和室のあるお部屋だった。
私はご満悦。畳の上をあちこち泳いでいた。
しかしここも長期滞在は想定していないようだ。
クラウスさんは早々と逃走ルートを確認していた。
「クラウスさん、タブレット下さい」
「カイナ。君は少し休んだ方が」
「運んでいただいている間に、仮眠を取らせていただきました! 大丈夫です!」
大嘘をつき、腕をバタバタさせた。新しい魔術書の続きを読みたい。早く大人の魔術書まで行きたい。
そして、私にかけられた術式の解除を開始するのだ!
「ではタブレットを。それとこれを」
「?」
クラウスさんは、コンビニの袋から何かを出した。ペンとノートだった。
「ここから先は、それが必要になってくるだろう」
「はい」
難易度が上がるってことか。負けるもんか!
私は畳に寝そべり、タブレットの文字を追っていく。
確かに複雑な計算式とか法則とか増えてきた。チートゆえサクサク進みはするけど、最初の本より時間がかかる。
ノートはあっという間に書き込みや計算式で埋まっていった。
だがそもそも、寝そべってお勉強というのが間違いで……。
「ゆっくり休みたまえ」
あ! クラウスさん! 起こして下さいよ!
いや私に毛布をかけるんじゃなく!
……ぐぅ。