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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 ライブラに向かう道すがら、クラウスさんはいつも以上に私を心配していた。

「体調が優れないのだから、仕事をせず休んでいてくれたまえ」
「何か食べたいものはあるかね? 君が望むのであればモルツォグアッツァの今夜の席も用意しよう!!」
「異常を感じたときはすぐ私に報告を」

 何か異常があるとすれば、クラウスさん、あなたですが。

 あと聞き慣れない単語がサラっと言葉の中に入ってたな。
 ヘルサレムズ・ロットのレストランか何かだろうか。予約一つに、ずいぶんと大げさな。
 
 食事と言えば、実を言うと食べたくはなかった。
 夢見が悪かったのもあるし、また何かしらフラッシュバックして、リバースするのが怖くもあったので。

 しかし、ただでさえ神経質になっている今のクラウスさんに、そんなことが言えるはずもない。
 ならば。

「いやあ、今朝はギルベルトさんのパストラミベビーフのベーグルサンドが猛烈に食べたい感じなんです!
 ですが、でも都合良く用意されてるワケでも無いでしょうねえ!
 ……おっと、クラウスさん! スマホをしまって下さい! 連絡は無しですよ!
 今からお作りいただくのも申し訳ないです! 残念ですが今朝はヘルシーに水道水と塩で済ませようかと!!」
 と、適当に言っておいた。

「それは健康にはほど遠いメニューだ。ギルベルトは君を深く気遣っている。
 君も彼を気遣ってくれているのなら、どうか食べてくれたまえ」

 
 またジョークを真っ正面から受け止め、クラウスさんは私の手を握った。
 そしてビルの一角から、例の四面扉のエレベーターに乗る。
 エレベーターが上昇する。私はぼーっと、床にある天秤の紋様を見ていた。
 クラウスさんはまだ心配されており、

「だが君の胃腸の具合が心配だ。もう今夜の食事会は中止に――」
「いえいえ行きたいですっ!! 行きますです!!」
 昨日、クラウスさんはギルベルトさんに連絡する際、食事会のことも知らせていた。
 有能執事さんのことだ。
 もう会場の選定と予約、皆への連絡まで済ませたに違いない。
 
 ……タダ飯の予定が消え、ザップさんに恨まれるのだけはごめんだった。
 
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