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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変




 ちょっと目が覚めてきて周囲を見回すと、窓から淡い朝日が差し込んでいた。

 ぬくぬくとしていて当たり前だ。
 私はコタツで寝ていた。ものっすごく狭そうにクラウスさんも一緒に寝ていたが。

 上半身を冷やさないようにという配慮なのか、私はクラウスさんの高級ベストにすっぽり包まれていた。
 んで、クラウスさんの腕枕で寝てたようだ。
 
 ……そら夢見が悪かったわけだ。布団も枕も固すぎる。

 彼は私の背中を支えて起こしながら、

「何か不安や心配事はないかね。遠慮せず私に言ってくれたまえ」

 起きがけに、それですか。
 しかし、いかにクラウスさんがすごくとも、私の見た悪夢の内容までは分からない。
 
「何なりと言ってほしい。
 私は君の恋人として出来る限り、君の助けになりたい」

「は、はあ」

 えーと、どんな夢見たっけか。
 ……私を食い荒らす光の渦。思い出せない言語。忘れてしまった両親の顔。

 …………。
 
「問題ございません。凶暴なアラスカヒグマを、私の血闘術で粉砕する爽快な夢を見ました!」

「そうか。夢の中であっても、君はとても勇ましい。
 だがいかに勇敢であろうと君はレディだ。
 どうか私にも、君の持つその重荷を預けてくれたまえ。私は喜んでその荷を背負おう」

 ……クラウスさんの言葉が意味もなく重い。
 そして毎度、渾身のボケをスルーされる寂しさ。

「てかクラウスさんが何でコタツに入ってんですか」

 クラウスさんは――あまり寝てないのか、目の下のクマが凄まじいことになってて、人相がいよいよ悪くなっている――眼鏡をかけ、
「うむ。君がいつも偏愛しているし、君が寝入ったので、そのまま共に寝て締まった」
「して、ご感想は?」

「いかに低温であろうと暖房器具の直下で入眠することは、健康と安全の観点から推奨は出来ない」

 謝れ! コタツで寝ている全国の人に謝れ!!

 けどクラウスさんは真面目な雰囲気のまま。

「カイナ。出立を急かしてすまないが、共にライブラに来てほしい。
 仕事をする必要はないから、どうか私の目の届く場所にいてくれたまえ」

 え。昨日はデータ入力手伝ってとか、言わんかった?
 切り替えどころが不明だ。

「ん?」
 と、そこに鏡が目に入った。


 その中に映った私は――泣きはらした目をしていた。


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