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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 私はコタツに入っている。
 暗黒の『話しかけんな』オーラを全開に出し、敵を牽制(けんせい)している。

「カイナ……どうか機嫌を直してもらえないだろうか」

 背後ではクラウスさんが身を縮め、困り切っていた。

「あ?」
 ドスのきいた声で返すと、紳士は『!』と怯えた顔になった。
「すまなかった。君に口づけたいと思っただけなのだ。
 だが君があまりに可愛らしく、歯止めが利かず……。
 も、もちろん君の意思を最大限に尊重するつもりで……」

「それ、私が悪いと仰りたいんですか?」

 ものっすごく低い声で返答すると、紳士は顔を青くして、大慌てで首を振った。

「断じてそんなことはない!! だが、その……異議の申し立てを許してもらえるのなら、私には君はそこまで拒んでいるようには……」

「だから、私に全ての責があると!?」

「……申し開きの余地もない。どうか許してほしい」

 クラウスさんはしゅーんと背中を丸める。
 でも絶対に許してやるつもりはなかった。

 なぜなら。
 抱えられたまんま一回。
 それだけで収まらず、さらに二回。
 さらにグッタリした私をバスルームに運び、嬉々として全身を『隅々まで』洗う。
 ……そしてムラッと来たのか、風呂場では何もしないという約束をアッサリと放棄してコトに及ばれた。

 私、怒っていいよね?

 しかも本人が『カイナは拒まなかった』という詭弁(きべん)を弄しているのが、また腹立つ!

「カイナ。どうすれば君に許してもらえるだろうか」
 私ににじり寄ろうとしたので、キッと睨みつけ、フリーズさせる。

 浅からぬつきあいになってから分かったのだが、クラウスさんは結構、理不尽だ。
 立派な方には変わりないのだが、時として公的な立場よりも趣味嗜好を優先。己の感情のまま行動する、子供っぽい一面があるのだ。
 それぶつけられる方は、たまったもんじゃないが。

 ……てか、眠い。元々疲れてるのにバスルームで無体を強いられ、元々の寝不足もあって体力が限界近い。

 むしろクラウスさんの化け物じみた体力に、いっそ恐怖を感じる。
 
「…………」
「カイナ?」

 ね、眠い……。私の味方はもうコタツだけ。

 もう声を出すのもおっくう。身体が動かせない。

 ……ぐぅ。
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