第4章 異変
クラウスさんは、まだスティーブンさんとお話されている。
「ああ、今のところは何も……分かっている。決して目を離したりはしない」
ん? スティーブンさんって、そんなに私のことを心配してくれるキャラだっけ?
初対面時より砕けてきたと思うけど、未だ厳然たる壁が存在すると思ってたのに。
心境の変化でもあったんだろうか。クラウスさんと同じ大人でも、あの人はよく分からん。
「……? ああ、今で構わない。明日の人員配置については君の提案通りに――」
ついでなのか、クラウスさんは仕事について話し出した。
私が聞くのは不味いかなーと思ったけど、クラウスさんは私の髪をわしゃわしゃしたり、耳や顔を撫でたりしてる。
ちゃう! 私は猫ちゃう!! いとも簡単に片腕で抱き上げるな!
ジタバタしていると、クラウスさんがスマホからちょっと離れ、私に、
「カイナ。すまないが、もう少しで終わるから、大人しくしていてくれたまえ」
そう言ってスティーブンさんとの電話に戻った。
「すまん。スティーブン。それで、明日の件について最終の確認を――ん? カイナか?」
クラウスさんは私を小脇に抱えながら、
「彼女なら今、私の腕の中にいる」
ブツッ。
……電話が切れた。
クラウスさんは不思議そうにスマホを見、
「? スティーブン? なぜ切れてしまったのだろう。
もしや向こうで何か緊急事態が……」
「いえ、絶対に勘違いされてると思います」
エロい方向に。
「何を? 君が私の腕の中にいるのは事実ではないのかね?」
もしかして私、真顔でボケられているんだろうか。
いきなり電話でノロケをかまされたスティーブンさんも、ご愁傷様としか言いようがない。
「とにかく、もう寝ましょう。さっきも言ったけど、今日は何も無しですよ?」
「……。もちろんだとも。私は君と共に過ごせるだけで、十分に満たされる」
今、一瞬だけガッカリした顔になっただろう!!
ああ、清い関係だったころの禁欲的なクラウスさんが懐かしい!!