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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 そしてクラウスさんは私の目をじっと見、少し震える声で、

「……もし明日、君の体調が良ければ、また仕事を手伝ってもらえるだろうか?」
「んん? 当たり前っすよ。やっとデータ入力に慣れてきたんだから、それくらいさせて下さい」
 最初はバイトみたいな仕事だろーと軽く見ていたが、すぐにそう甘くないと思い知らされた。
 求められる集中力と精確さ。決して軽い仕事では無い。
 それだけに、任せてもらえるのがとても嬉しかった。

「あとザップさんやチェインさんと話すのも楽しいし」

「ああ、ああ、そうだとも!」

 クラウスさんがまた、私をぎゅっと抱きしめた。

「……て! い、痛い痛い痛い痛い!!」

 このヒグマ!! 人の背骨を折る気か!!
 何で今日はこんなにテンション高いの!!
 けどクラウスさんは私の肩にデカい顔をうずめる。
「カイナ。明日は、皆で食事に行こう」
「は? ああ、いいですけど……」
「……そうだ。すぐに連絡をせねば!」
「???」

 クラウスさんの謎テンションについていけない。
 てか、何の連絡を入れるつもりだ?
 けどクラウスさんはすぐギルベルトさんに連絡を入れていた。

「ギルベルトか。カイナが回復を……ああ。もちろんだ!
 問題はない。以前と変わりなく愛らしい」

 ……え? 執事さんに電話でノロケ? 無い無い。引くわー。
 時間も時間だし、相手もいい迷惑なのでは?
 けど電話から漏れ聞こえるギルベルトさんの声は、明るい。
 どういうことなんだろう?
 この主従のテンションはよく分からん。

 ま、いいか。クラウスさんの気がそれたし、今のうちに……。
 私はコソコソとコタツに入ろうと――。
「うわ!」

 身体に腕を回され、クラウスさんの元に引き寄せられた。
 止めて。足が浮きそう。そしてさりげなくケツを触ろうとするな!!
 クラウスさんはというと、抱き寄せた私のお尻をさわさわしながら、次にスティーブンさんに電話をかけた。

「その通りだ、スティーブン! 私としばらく触れあっているうちに、突然正常に……」

 どういう意味だ。私はずっと正常ですがな。
 
 ただ100%正常というわけでもない。
 実は今日の朝からの記憶が、ほとんどないのだ。

 明け方まで頑張られて爆睡してたからだろうか。

 謎である。
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