第4章 異変
よく分からないことが多すぎる。
でも考えるのが面倒くさい。
面倒くさいことは沈めてしまおう。クラウスさんのことだけでいい。
私は車イスにのったまま、うとうとする。
「カイナさん。ベッドでお休みになりますか?」
ギルベルトさんがこそっと聞いてきた。
「いえ、ここが、いいです……」
執事さんは微笑み、持参した毛布を私にかけてくれた。
あったかい。だんだんと、まぶたが下がってきた。
…………
…………
誰かが話をしてる。
『スティーブン。明日もまたよろしく頼む』
『ああ。それとチェインから連絡が入った。
どうやらザップは本気で堕落王を探しているらしい』
『……カイナのため、だろうか』
『他に理由はないだろう。口じゃあ自分に責任はないとか、愛人宅に泊まるとか言っておいて……』
『いかにザップだろうと、あの事態を察知することは困難だ。
彼一人が負い目を持つことではない』
『いや責任感だけで動く奴じゃない。何だかんだで、お嬢さんを可愛がってたからな。何とかしてやりたいんだろう』
『……私が、カイナを不安がらせてさえいなければ』
『おいおい。君らしくもないな。君のおかげで、また安定してきている。
例えこのままでも、また関係を築いていけばいいだろう?
お嬢さんは間違いなく、君に好意を抱いている。僕にはそう見えたね』
『ありがとう、スティーブン。君の言葉はいつも私を支えてくれる。
そうだな。常に前へ。無い道は切り開けばいい』
『そ、そうだぞ、クラウス』
クラウスさんが重い。
スターフェイズさんが若干引いてる。
いったい何だって、そこまで壮大に悩んでおられるのか。
でも眠くて頭が働かない。
そして誰かが私をひょいと抱き上げる。
『坊ちゃま。レストランにはキャンセルの連絡を入れておきました』
『すまない、ギルベルト。今日は下がってくれたまえ。私がカイナを送る』
『かしこまりました。こちらに軽食を用意させていただきましたので、どうぞお召し上がり下さい』
『ありがとう』
誰かが私を運んでいる。眠い。眠い。
エレベーターに入る。閉まる。眠い。
「良い夢を」
何かやわらかいものが、私の唇に触れた。
それで安心して、もう一眠りすることにした。