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【血界戦線】紳士と紅茶を

第4章 異変



 誰かに背中をぽんぽんされ、まどろみから浮上する。

「カイナ、そろそろ着く。起きたまえ」

 ふみゅ。

 いつもより己の知能指数が下がっている気もしたが、とりあえず目を開けた。

「すみません、何か寝ちゃって」
「謝ることは何もない。良く寝ていた」

 クラウスさんは雑踏の中、私を肩に抱き上げたまま歩く。
 いつもより視線が高いせいか、夜の街がよく見える。
 人間、異界人、その他よく分からない異界生物。
 でも私はクラウスさんの肩にしがみつき、また、うとうと。

「さあついた」

「?」

 クラウスさんはどこかのビルに入った。
「…………?」
 私の実験か何かが始まるのかなーと思ったら。
「???」

 ビルの敷地に一歩入ると、目の前のビルが消失した。
 代わって現れたのは、温室のついた暖かな一軒家だった。

「ビル街の真ん中に家があると、通りから目立ってしまう。
 だから幻術でこうして、通行人の目をごまかしているのだ」
「はあ……」
 クラウスさんの肩にあごをのせ、コクンとうなずく。

 大きな靴が芝を踏む音。
 クラウスさんは玄関で、セキュリティシステムにコードを入力する。認証、オールパス。
 最後に術式形状変化鍵を差し込みロック解除。

 自動ドアが開き、生体反応ライトが点灯する。
 私は両腕に抱っこされ、クラウスさんの胸にもたれ、運ばれていく。
 やがてリビングに入り、温かいライトがつく。
 私はふわっと大きな白いソファに横たえられた。
 何かが私にかけられ、ちょっと温かい。

 クラウスさんはかがんで私の唇にキスをし、

「軽食を温めてくる。休んでいてくれたまえ。ただしリビング中央にある『アレ』には触れないでほしい」
「はあ」
 よく分からず、こくんとうなずいた。
 クラウスさんはフッと笑った。
 そして足音が遠ざかっていく。

 私はうとうとうと……。

 ――へ?

「!?」

 ガバッと起き上がる。

 え? 何!? 何この状況!? 今、キスされたよね!?
 この家は何!? 何でクラウスさん、この家に私を連れ込んだの!?
 てか、布団代わりにかけられてるこれ、クラウスさんのベストか!? でけえ!!
 
「…………」

 ふんふんとベストに顔を近づけ、匂いを嗅いでみる。

「いや変態か!」
 
 己にツッコミを入れ、完全に起きた。

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