第4章 異変
目を開ける。
広い広い空間。壁一面の本棚、デカすぎる窓、天井のシーリングファンライト。至る所にある観葉植物。
何やら金がかかってそうなオサレな事務所に、私が寝てるベッドがある。
しかも普通に仕事されてるクラウスさんのほぼ真後ろである。
何でオフィスにベッド。しかも中心地点たるクラウスさんの真後ろ。
浮きっぷりがハンパない。あともう一つ。
「あ、あの……クラウスさん」
お仕事中なので声をかけるには勇気が要ったが、クラウスさんはすぐ振り向いてくれる。
だけどやっぱり雰囲気が怖い。
でも精一杯のような笑顔で、
「何か欲しいものでも? それとも寒いのかね?」
「私、何で点滴をしてるんですか?」
「君は今、軽い脱水状態にある。必要な処置だ」
「だ、大丈夫です。点滴は不要です。こんなベッドもいらないし」
「受けてくれたまえ。君の身体は水分を欲している」
「大丈夫ですよ。私、死んでも生き返りますから!」
……ん? あれ、ヤバい。変なこと言っちゃったかな。
クラウスさん、私が『不死』だって知らなかったかも。
変な奴だって思われちゃったかな。
「あの、クラウスさん……」
「寝ていてくれたまえ。頼む」
私を見下ろす瞳が、どこか哀しげだった。
「はい」
なので目を閉じる。
大きな窓から見える、霧に包まれたビル街を眺めた。
クラウスさんやスターフェイズさんがパソコンを打つ音がするだけ。
あとは、とても静かだ。
次第に眠気が……眠気が……。
ね、眠れねえ!!
元々平均睡眠一時間だし、今はまさに寝起き。
そしてこのライブラなる事務所に漂う、ものすごい緊張感。
何よりクラウスさんから発される鬼気。
「カイナ。何か不安なことでも?」
い、いや。一分ごとにこちらを振り向くあなたの態度に、最大の不安感を覚えるのですが。
様子を見るを通り越し、監視されてる気がする。
とにかく寝よう。
目を閉じ、どうにか寝ようと――。
どーんと、ビル街の向こうで轟音がした。
見る間に黒煙が立ち上り、遠くのビルが一個、土煙を上げながらガラガラと崩れていった。
「……っ!!」
目を丸くしていると、クラウスさんが立ち上がり、窓の外を目視。
スターフェイズさんがテレビをつけ、報道を確認していた。