第4章 異変
私ことカイナ・シノミヤ。多分、日本出身で『不死』の能力持ちである。
私は魔導組織『メビウスの輪』の実験材料兼、弾よけで、連中に連れられヘルサレムズ・ロット入りした。
けどヘルサレムズ・ロットの洗礼を受け、彼らが全滅してからは廃墟となった教会に一人で住んでた。
その後、何やかんやでミスタ・ラインヘルツという紳士と出会った。
ミスタ・ラインヘルツは時々教会に来て、ガレキを片付ける手伝いをしてくれたり、ドーナツをごちそうしたりしてくれる、すごく良い人だ。
――以上。
……のはずなんだけど。
…………
「あ、あの~、ミスタ・ラインヘルツ」
恐る恐る呼びかけてみる。
クラウスさん、パソコンを打つ手を止め、
「私のことは、クラウスと」
「い、いえ、でも色々お世話になっているのに、えーと……その……」
ついこの前、崩れかけた教会で会ったばかりなのに。
シャイなジャパニーズとしては、いきなりファーストネーム呼びは気後れしてしまう。
「どうか、クラウスと。カイナ」
……クラウスさんも『ミス・シノミヤ』と呼んでこない。
前は私のことをレディ扱いして、丁寧にしゃべってたのに、今は普通な感じに話すし。
何なんだ、この急接近は。
「クラウス……さん」
どうにか言うと『それが当たり前』みたいに、うなずかれた。
「それで、何か?」
「私、教会に戻りたいんですが……」
ベッドの上で、もそもそと身体を動かす。
「あと、あとですね。何故私は、教会を出て、こんな場所にベッドで寝ているのでしょう?」
ちんぷんかんぷんである。
ミスタ・ラインヘルツの名を呼んで。そこで一回気を失って。
気がついたらベッドの上だ。
「私、教会の跡地にいたはずなんですが……あそこを離れると、私、怒られるし……」
『組織』の人が、今まさに私を回収に来ていたらどうしよう。
不安で不安で、心がざわざわする。
「君の組織『メビウスの輪』と我々の結社『ライブラ』は正式に同盟関係を結ぶことになった。心配しなくていい」
視線を向けると、目元に傷のある男性が立っていた。
私はビクッとしたけど彼は笑顔で手を差し出し、
「ごきげんよう。お嬢さん。スティーブン・A・スターフェイズだ」
「……はじめまして」
ベッドの上からぎこちなく握手した。