第4章 異変
「カイナ。カイナ、大*夫!? しっか*して!!」
誰かが私につきそい、必死で背中をさすってくれる。
「すみません……ごめん、なさい……」
「何言っ*るの、いっ*い、ど*したの? お願*、教*て!」
懇願されるほどに焦る。
ダメだ。ついに皆に心配をかけてしまった。
あらゆる記憶と映像がわんわんと頭の中で鳴り、私は頭をかきむしり、自分を傷つけたい衝動と戦う。
家に一人でいなくて、私のそばに誰かいてくれて良かった。
でないと、どうなったか分からない。
「カイナ……何で苦しいのか、言ってく*ないと、分か*ないよ……」
誰かが私の首にすがりつき、泣きそうな声で言う。
「ごめ*ね。私が昨日、君か*目を離し*から……本*に、ごめん……」
そして誰かが走ってくる音がする。
「チェ*ン! 君ま*動揺し*ど*する。とに**一度寝*せるぞ!」
どんどん大ごとになっていく。
私、迷惑をかけている。皆に時間を取らせている。
落ち着け。どっか行け。薄まれ、薄まれ、薄まれ、と必死に願った。
私はもう死なない。過去なんかに振り回されない。
お願いだから……全部消えて!
私は……私は……。
……私……。
…………
…………
気がつくと、激しい波は去っていて、私は完全にいつもの穏やかな気分になっていた。
「カイナ、カイナ、しっかりしたまえ!!」
でも誰かが私の肩をつかんで、呼びかける。
ぼうっと振り向くと、大きな人がいた。クラウスさんだ。
背後には厳しい顔のスティーブンさんも見える。
ギルベルトさんもいて、なぜか担架を持って来てた。はて。急病人が出たのかな。
うーわー。ここ、女性用トイレなのにー。
……女性用トイレ? 何で私、こんなところに?
どうも記憶があいまいだ。私ってバカだから、すぐ忘れちゃうんですよね。
……あれ?
スティーブンさんって誰だっけ?
あれ? あれ…??
「大事ないか!? 私の名前を言えるかね!?」
私の肩をつかむクラウスさんの目。
その碧の瞳に、なぜか恐怖の色があった。あんな強い人が。
よく分からないけど、これはすぐ安心させねば。
なので笑顔で言った。
「もちろんです、ミスタ・ラインヘルツ」