第26章 再始
坂口安吾は通信端末をジッ、と数秒見つめていた。
繋がるか否か、判らないがーー
決意したのだろう。
番号を押し、通信を試みる。
プルルル…
矢張り出ないか、と思ったと当時だった
『やァ。そろそろ掛けてくる頃だと思ったよ』
「…紬さん」
相手ーーー太宰紬は、想像より明るい声で応答したのであった。
『君から私に掛けてきたという事は治に有事だね?』
「ええ、先程、太宰君との連絡が途切れました」
『そう。計画通り事が運んでいるみたいだ』
「!?太宰君は一体」
『「魔人」の元さ』
「何ですって!?」
安吾は紬の返答に頭を抱える。
「彼は、欧州の異能刑務所『ムルソー』に収監されました」
『だとすると治の行き先も其処になるねぇ。安吾が消してくれた過去でも明るみになれば、同じ場所に収監されるには充分だろう』
「そんな…七號機関が消した罪が明るみになるなど」
『恐らく、『犯罪を消す異能力者』が「魔人」の手中下なんじゃないかな』
凡そで話している紬だろうが、安吾はそれを信じる。
恐らく、間違えてはいないことを理解しているからだ。
「……状況は理解しました。それで、僕は何を?」
『話が早くて助かるよ。その前に質問なのだけど、この状況下、君はどう思っているんだい?』
少し声音が低くなった紬の質問の意図。
「考えたくありませんがーーー政府関係者にも既に「魔人」の手に掛かっている者が居ると思っています」
安吾は、それを正しく理解し、返した。
『…私もそう考えている。治の逮捕から推察するに、今に起こる武装探偵社の危機には我々とは異なる闇が絡んでいる筈だ。その眼を掻い潜りながらになると思うが、やれそうかい?』
「無論です。貴女には返さなければいけない恩もある」
『…そう』
紬は苦笑する。そして、直ぐに、次の句を継いだ。
『安吾には治の「仲介役」を頼みたい』
「構いませんが、如何やるお心算です?」
『調べたところムルソーには脱走防止用の生体信号検知器を埋め込むそうじゃないか』
「真逆、それを利用する、と?」
『治なら心臓だって止められるからね』
まあ、太宰君だしな、としか思えない安吾。
そして、
「此方はお任せください」
そう力強く言い放った。