第24章 連携
「じゃあ、何?お前も小説の中に這入って素敵帽子君を助ける心算?まあ、太宰と同じ頭脳なら殺人犯を選別する事なんか難しくないだろうけど」
乱歩が、そう云うと紬は首を横に振った。
「私は中也を回収できればそれで。抑も、感情的に動きさえしなければこんな事には成らなかったのだから。自力でこの中から出てきても足りないくらい反省してほしいところです」
「…そう」
本当に戦闘する意思がないことを、確信できたのか。
乱歩は漸く小さく息を吐いた。
「勿論、タダで貰う心算はありませんよ」
「へぇー。何を呉れるの?」
「船なんて如何です?」
「船ぇ?」
乱歩が詰まらなそうに云う。
「組合との取引を恙無く終了させましたら、船を1艘くれましてね。まあ、それまでは良かったんですけど、我々には一寸目立ち過ぎるため持て余しておりまして」
「成程。それと交換って訳ね。いいよー」
「乱歩君!?」
アッサリと返事する乱歩に驚くエドガー・アラン・ポー。
そして、ふふふと笑う紬。
「一応、探偵社への伝言です。『また相見えるときまで』と」
「……ふーん。」
そう告げると紬は、くるりと踵を返し、その場を去っていった。
その姿が見えなくなったのを確認して、エドガー・アラン・ポーは乱歩に聞く。
「乱歩君、本は渡して良かったのか?」
「渡さなかったら殺されてた。僕も君も」
「え?!」
「……太宰妹は前回の三つ巴戦の前線には一切顔を出していない。なのに、君の異能を『正しく理解していた』ーーーとなると」
「術者である吾輩を殺して異能を解除させる事も出来た?」
エドガー・アラン・ポーの言葉に乱歩は頷く。
「前に現れた時、社長に握手を求めた太宰妹の行動を、珍しく焦りながら太宰が止めた。恐らく、触れただけで何か出来る異能力を持っている……それこそ僕たちなんて瞬殺できるほどの」
「吾輩、このままだとマフィアに命を狙われるのであるか?」
「それはない。太宰妹の目的はあくまで『中原中也のいる本を安全な場所に確保する事』だ。解放を求めているなら、あのやり取りは彼女の中で存在しない」
その言葉に安堵の息を漏らすエドガー・アラン・ポー。
「…此処を割り当てられる程の人物、か」
乱歩の呟きは、誰にも届かずに消えたーーー。