第4章 淡い気持ち【山崎宗介】
(何で、そんな睨まれてるんだろ…やっぱり迷惑だったのかな)
それもそうか。年頃の男子が『ただの幼馴染み』である女子に毎日学校に通われるなんて、いい気分ではないだろう。
『彼女』かと周りに問われたり、囁かれたりするかもしれない。
やっぱり、私じゃ……
空「…ごめん、迷惑ならもう見に行かないよ。」
顔を見られないように前を向いて歩き出す。
彼は、私の微かに震えていた声に気付いてくれただろうか…
とその時、不意に手を掴まれて後ろへ引っ張られた。
何事かと理解しようとしていると、彼の温もりに包まれた同時に…
ライトを付けた車が、私たちの真横を通り過ぎて行った。
彼が手を引いてくれなかったら、私は…
宗介「っぶねぇな……ぼーっとしてんな」
語気を強めて言われると、思わず項垂れてしまう…
空「ごめん……助けてくれてありがと。じゃぁ、もう離し…」
宗介「離さねぇ」
彼の言葉に耳を疑う。
『離さない』?どういう事だろうか……
宗介「…お前が、『幼馴染み以上』になるまで…離さねぇ」
えっと…それは、つまり……
宗介「………俺と付き合え」
長く間をもって紡がれた言葉は、私の周りに流れる時間を一瞬だけ止めた。
すぐには信じられない、幼馴染みからの言葉。
でもそれは………私が一番、欲しかった言葉。
空「……何でそんな、命令口調なの」
一番欲しい言葉が言われると、肩の荷が降りたように気分が軽くなって、笑える余裕が出てきた。
宗介「うるせぇな……俺が不器用なのは、空が一番分かってんだろ」
さっきのものとは裏腹に、優しさを含んだ言葉。
その言葉を聞いているのは、私だけ……
空「まぁ、そうだけど……仕方ないなぁ、付き合ってあげますよ」
わざと呆れ気味に言ってやると、彼は意外にも驚いた顔でこちらを見た。
不思議で首をかしげてみると…
宗介「いや……お前がうちの学校に来るの、好きな奴がいるからかと思ったから…」
…なるほど、彼は彼なりに不安だったらしい。
そんな馬鹿みたいなこと、聞かなくていいのに。
空「私が好きなのは、宗介だよ」
《Fin》