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甘々生活一端集【Free!/R18】

第3章 夏の約束【橘真琴】


顔を上げてみると、急に大声を出した私に驚いたように目を見開いた真琴先輩の顔があった。


微かに唇を噛んで決心を固めながら精一杯視線を合わせる。



綺麗な黄緑色の瞳に何かを言いかけている自分の姿が見えた。



空「……先輩、私…先輩のことが」



そこまで言って、止まってしまった。

そうなってしまったのも仕方ない。だって……




だって、真琴先輩が私を抱き締めているから。


どうして、抱き締められているの?

どうして、先輩の温もりが目の前にあるの?

私は、何を言おうとしていたんだっけ…



様々な疑問が浮かんでは消えていく間も、ずっと先輩は私を離さなかった。



真琴「…もう少し、待ってくれないかな」


やっと現状を把握出来てきた時に聞こえてきた、真琴先輩の掠れた声。


いつもよりずっと近い位置で聞こえたため、微かに声が震えているのも分かった。



真琴「…次の大会で、優勝するまで…待ってくれないかな」


再び紡がれた言葉。


『待つ』…次の大会で『優勝』するまで……

それはつまり、『次の大会では絶対優勝する』ということでいいのだろうか…


(……そんなの、そんなこと言われたら…)



空「……待ちますよ、いくらでも」



案外落ち着いて言えた言葉。

先程まで焦っていたとは思えない、自分でも驚くぐらい冷静な声だった。


それはきっと、安心が不安を払拭してくれたからだろう。



真琴「…ん、ありがと。今度は、俺からちゃんと言うから…空ちゃんに、先越されないように」



相変わらず私を抱きしめながら、真琴先輩は微笑んで言う。


(あぁ……やっぱり、この優しさが…微笑みが、先輩の全部が、私は好きなんだ)



そう再認識すると、ゆっくりと先輩の背中に腕を回して抱き締め返した。


真琴先輩も、抱き締める力を強めてくれた。




若緑の映える季節、綺麗な夕陽に見守られながら、私達は一生忘れることのない約束を交わした。


《Fin》

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